2026年春季低温工学・超電導学会研究発表会 セッション報告
SCSC ケーブル (1) 1A-a01-06 座長 柳澤 吉紀
1A-a01: 雨宮(京大)から、SCSCケーブルの研究開発全体を概観する報告がされた。SCSCケーブルは、幅2 mmの銅複合10芯REBCO線材をコア材料に巻いたケーブルであり、曲げや印加磁場に対して等方的であること、多芯化により交流損失・遮蔽電流磁場が小さいことが特徴である。開発のフェーズがケーブルレベルからコイルレベルに移りつつある。多芯化によるクラッキングなどの悪影響は見られないとのこと。
1A-a02: 坂本(東芝)から、真空含浸がSCSCケーブル通電特性に与える影響について報告がされた。塗り込み含浸で通電特性が劣化、真空含浸では劣化が見られず、という結果が得られた。ケーブルの断面観察により、前者ではエポキシの空隙や、素線のコアからの剥がれが見られた。特性との因果関係は今後明確にすべきこととのこと。劣化原因や含浸方法の優劣などについて議論がなされた。
1A-a03: 宇都(東芝)から、SCSCケーブルを用いたダブルパンケーキコイルの試作・巻線特性評価について報告がされた。ケーブルの引張試験結果の則り、5 kgfの張力、最小曲げ半径50 mmの条件下においてダブルパンケーキコイルを製作し、液体窒素中で劣化のない通電特性が得られた。
1A-a04: 園部(京大)から、SCSCケーブルによる鞍型コイルの試作と通電特性について報告がされた。二軸回転の簡易巻線機を作製し、手作業により鞍型コイルを試作した。77 K自己磁場通電で得られたV-I特性は、特に低電界領域において予測値と一致した。曲げによってケーブル内の素線に生じるひずみについて議論がなされた。
1A-a05: 上垣(京大)から、SCSCケーブルを巻いたコイルの交流損失測定結果が報告された。コイル形状は同じで単芯線を使用したケーブル(SCCケーブルもしくはCORC-likeケーブルと呼ぶ)のコイルと比較した。二つのコイルは、素線のIcが大きく異なるため直接的な比較が難しいところ、適切な処理により結合損とヒステリシス損を切り分け、SCSCはSCCと比べ約1/5の損失であることが示された。素線同士の磁気的カップリングの影響はほぼないとのこと。
1A-a06: 曽我部(京大)から、回転磁界下でのSCSCケーブルの数値電磁解析結果が報告された。多芯(SCSC)と単芯(SCC or CORC-like)について、回転磁界もしくは交番磁界が印加された場合の交流損失を計算した。重要な結果として、回転磁界・交番磁界いずれの場合も、結合電流の時定数は同じであることが示された。また、回転磁界の場合、超伝導面に常に垂直磁界がかかっているので、交番磁界の場合と比べて概ね二倍のヒステリシス損失が発生することが示された。
環境・安全 1A-p02 座長 川越 明史
本セッションでは、環境・安全委員会より一件の発表があった「1A-p01:池内正充(前川)」。2025年1~2月にかけて実施したアンケート結果に関する報告である。情報提供として望ましいものや、あった方が良いと考える資格、その他意見を、通常の質問に加えて集めたとのことであった。望ましい情報提供として多くあがったものは、事例・事故情報、ヒヤリハットであった。資格としては、さまざまな資格があげられるとともに、学生への実験への支障を危惧する意見もあった。その他意見としては、安全リテラシー・教育・継承などがあった。テキストがすでに公開されているとの説明であったので、実際にどこで公開されているかの質問があり、低温工学・超電導学会のWebサイトで閲覧できることが紹介された。また、MRIなど医療業界との密な情報交換が必要であろうという意見もあった。
SCSC ケーブル (2) 1A-p02-07 座長 佐々 滉太
1A-p02:福井(新潟大)らは、電機子コイルをSCSCケーブルで構成した回転機における交流損失の伝熱冷却について報告した。窒化アルミ巻枠を通した伝熱冷却により電機子コイルが想定内の温度に保たれることを数値解析にて確認した。
1A-p03:雨宮(京大)らは、SCSCケーブル中の素線に劣化部がある場合の分流について報告した。素線に劣化部がある場合、ケーブルの臨界電流は分流の効果により、各劣化部の臨界電流値の和より大きくなることを確認した。
1A-p04:美濃出(京大)らは、SCSCケーブルで巻いたコイルを4.2 Kにおいて励磁する試験の結果を報告した。ランプレート20 A/sで安定的に励磁できることを確認した。
1A-p05:曽我部(京大)らは、SCSCケーブルにおけるクエンチ解析モデルについて報告した。今回は直線状のケーブルを対象とした結果が報告されたが、曲げられたケーブルに対しても同手法が適用可能とのことであった。
1A-p06:菅野(KEK)らは、SCSC-IFBケーブルの曲げ試験結果について報告した。曲げ直径50 mmまでは臨界電流は初期値の90%以上を維持されることを確認した。
1A-p07:橋詰(京大)らは、SCSC-IFBケーブルにおいて、超伝導ブリッジの配置間隔が結合損失に与える影響について報告した。解析結果が、超伝導ブリッジを通る電流ループによる損失と通らない電流による損失の重畳として説明できることを確認した。
REBCO コイル安定性・保護 1A-p08-12 座長 西島 元
1A-p08: 山田(上智大)はレイヤー巻きNIコイルのターン間抵抗を制御するために、ターン間を模擬した短尺サンプルの接触面にステンレスメッシュを挿入し、さらにエポキシ硬化した場合の接触抵抗を測定した。エポキシ硬化によって接触状態が保持され、面圧を変化しても抵抗が安定すると報告した。
1A-p09: 榊原(北大)はREBCOパンケーキコイルの保護を目的として、実験データに基づいて機械学習を用いた電圧予測器をシステム上に実装し、常電導転移の予測に取り組んだ。この予測によって、予測からクエンチに至るまで1秒以上の猶予が生まれ、従来の予測器に比べて誤検知率も低下したと報告した。
1A-p10: 間藤(北大)は複数のREBCO線材を共巻きしたコイルの、励消磁時の電流分布を三次元有限要素法によって計算した。2枚バンドル巻線によって、劣化部を有する線の電流が分流する。接触抵抗が小さいほど分流時の損失は小さい。今後の大規模解析に向けては、どこまで省略・簡略化して計算量を減らすかが課題と述べた。
1A-p11: 鈴木(東北大)はREBCO並列導体の接触面にグラファイトシート(熱伝導率が高く、抵抗率が10-3 Ωm程度)による抵抗層を挿入した場合のクエンチ特性を検討した。抵抗層によって長手方向の熱拡散が促進され、ホットスポット温度抑制に有効であると述べた。
1A-p12: 宇都(東芝)はFace-to-Face Double Stacked (FFDS) 構造のREBCO線材を用いてエポキシ含浸パンケーキコイル(ターン間離型無し)を試作し、冷却時熱応力による剥離耐性を2枚バンドル巻線コイルと比較した。通常の2枚バンドル導体はエポキシ含浸により剥離し、それらコイルには劣化が見られたが、FFDS導体を用いたコイルはエポキシ含浸しても劣化しなかったと報告した。
REBCO 線材臨界電流 (1) 1B-a01-08 座長 武田 泰明
1B-a01:畠(青学大)らは、LaやNdをドープしたYBCO薄膜をFF-MOD法で作製し、酸素気流中でRE/Ba固溶量を調整するアニールを行った。一定の条件ではJcが向上したが、固溶調整量は十分に議論ができておらず、今後の展開が期待される。
1B-a02:下山(青学大)らは、REBCO薄膜に添加するBaMO3 (BMO, M = Sn, Hf, Zn, etc.) について、通常の固相反応では難しいMサイト固溶をプロピオン酸塩への溶解と焼成によって達成できることを報告した。1000℃で熱処理してもMサイトが固溶したBMOは分解しないため、格子定数を制御したBMO添加の可能性が示唆された。
1B-a03:石井(都立大)らは、FF-MOD法REBCO薄膜においてUltra-Thin Once-Coating (UTOC) 法と複数種のBMO共添加を組み合わせることによるJc向上を報告した。このJc向上はBMO粒子の微細化と高密度分散によるものと考えられるため、今後微細組織観察などで確かめたいとのことである。
1B-a04:奥村(名大)らは、PLD法YBCO薄膜においてY組成とBHO添加量の制御によって低温・高磁場でのJcが向上できることを報告した。微細組織観察からこの要因も考察しており、Jc-θにおける最小の値に注目すると最適値が異なる可能性があることも述べられた。
1B-a05:遠藤(名大)らは、BZO添加PLD法YBCO薄膜においてターゲット-基板間距離dを変えて、従来よりも高速での成膜について報告した。距離dが短い場合にJcが高かったが、c軸長や微細組織の変化など従来と異なる点が多く、さらなる検討が必要であることが指摘された。
1B-a06:福島(東北大)らは、REBCOでのオーバードープ状態でのJcに注目し、市販線材に追加の酸素アニールを行ってJcを評価した。入手後のJcにばらつきが大きく、EuBCOであることやAg層の影響など、酸素量やJcに影響を与える因子が多く、さらなる検討が期待される。
1B-a07:野島(東北大)らは、REBCO線材の高磁場マグネット応用にむけてIc (B,θ,T)特性を記述できる独自のモデルについて報告した。従来のモデルを複数組み合わせることで精度の良いfittingが可能であったが、パラメータ数が多く、今後モデルの改善を進めることが述べられた。
1B-a08:濱田(九工大)らは、ツイストしたREBCO線材のIcにおける縦磁界効果の数値解析について報告した。ツイストした線材は縦磁界の印加によりIcが上昇したが、ツイストによって電流の流れが3次元的になり、電流と磁界との平行度が高くなったためであることを数値解析から確かめた。
REBCO 線材製造・加工・評価 1B-p01-07 座長 岡田 達典
1B-p01:寺西(九大)からは、基板表面にストライプ上の非超伝導層を形成するSEF法による、YBCO薄膜のマルチフィラメント化に関する報告があり、Nbストライプ起因の非超伝導層形成などについて報告された。
1B-p02:藤本(九大)からは、上記SEF法によるNbストライプ基板上のマルチフィラメントYBCO膜について、STO基板との比較を通じて微細構造の報告や非超伝導層形成機構の議論があった。
1B-p03:金沢(室蘭工大)からは、REBCO多岐線の垂直磁場下におけるパルス臨界電流特性について、77 K・最大5 Tでの結果から高磁場領域での性能向上に関して報告があった。
1B-p04:伊藤(名大)からは、BHO添加YBCO薄膜の高速成膜に向け、組成依存のプロセスマップ構築と機械学習を活用した成長安定性評価についての報告があった。
1B-p05:渡邊(青学大) からは、FF-MOD法におけるREBCO線材の仮焼過程について、酸化物原料を視点とする合成法では、大気中仮焼でも高い結晶性と臨界電流特性が得られる可能性が報告された。
1B-p06:高木(青学大) からは、FF-MOD溶液を用いたREBCO線材の修復技術について、引張曲げによる欠陥導入後に再成膜を行うことで臨界電流をある程度回復できたとの報告があった。
1B-p07:小黒(東海大) からは、YBCO超伝導丸線へのNb3Sn添加について、PIT法による作製と熱処理の検討により、14 T・4.2 Kでの超伝導電流について報告があった。
REBCO 線材臨界電流 (2) 1B-p08-12 座長 元木 貴則
本セッションではREBCO薄膜線材の臨界電流特性等に関して5件の発表が行われた。1B-p08:東川(九大)らは、走査型ホール素子磁気顕微鏡(SHPM)を用いて、機械的もしくはレーザーで切断したREBCO線材端部のダメージ長について評価した結果について報告した。素子と試料表面距離を変えた複数の測定を組み合わせることで、単一の測定では得られない極めて高い空間分解能で推定できることが特筆すべき点である。1B-p09:呉(九大)らは、YとGdの比を連続的に変化させたコンビナトリアルREBCO薄膜に対して、SHPMによるJc分布を測定し、元素分析結果との対応について報告した。RE組成比とJcの関係を高速かつ多数の点に対して同時に評価可能である。1B-p10:佐久川(九工大)らは、REBCO線の電流移行を考慮した数値解析により、電流端子間の距離に対して、電流-電圧端子間距離をどの程度離せば正しいIcを計測できるかについての定量的な指標を提示した。1B-p11:佐藤(東北大)らは、数値解析と実験の両面からFace-to-Back構造でバンドルした線材の欠陥箇所の転流挙動について報告し、定性的に説明できることを示した。1B-p12:岡田(九工大)らは、REBCO線材のIcが縦磁場下でヒステリシスを示す興味深い現象について報告した。特に、低温で顕著なヒステリシスが表れており、縦磁場の場合に固有であることから縦磁場下Icの決定メカニズムに関する研究が進展することが期待される。
冷却技術 1C-a01-03 座長 神谷 宏治
1C-a03:渡邊裕文(中部大学)
多層断熱材の巻き付け時の余剰長が侵入熱に与える影響について、ウェブからの講演であった。会場のネットワークが不安定となり、何枚かのスライドが説明できないというアクシデントが発生した。今後はネットワークの事前チェックが必要であると感じる。質疑応答で大森先生から2つの質問が出た。①何層か巻いていくと最内層の性能が変化してしまうが本研究ではそれを認識しているか。②実験はボイルオフカロリメータを10度傾けて実施したとのことだがその場合下側ガードタンクへの窒素供給配管にしっかり熱アンカーを取らなければ熱侵入が過大になる懸念がある。残念ながら再びネットワークが不安定になり、回答ができない状態となってしまった。
小型冷凍機 1C-a04-07 座長 島崎 毅
1C-a04:西尾(アルバック)らは、シミュレーション解析により充填材比率を決定したGAPを含めた複数層構造のパルスチューブ冷凍機用蓄冷器を提案し、ターゲットとした3 K近傍での冷却能力を40 %向上させた。物性研究や量子コンピュータ向けの冷凍機として、従来の4 K近傍よりも低い3 K近傍での冷却能力の向上が望まれているとの背景に応じる研究開発である。1C-a05:増山(大島商船高専)らは、1段GM冷凍機について、一台の圧縮機にコールドヘッドを1台(単体駆動)、或いは同じタイプのコールドヘッドを2台(並列駆動)接続した場合について、冷却特性の温度依存性を比較した。20 K~80 Kの温度範囲で計測した結果、高温側に、単体駆動よりも並列駆動の方が高い冷却能力を発揮する温度領域があることを見出した。また、圧縮機とコールドヘッドを流れるガス量の解析からその特性を予測できる可能性も示した。1C-a06:Lin(同済大)らは、20 Kにおける冷凍能力が100 Wとなる、従来に比べて高い冷却能力を発揮するパルス管冷凍機を試作しその特性を報告した。二台のアクティブバッファー型パルス管冷凍機を一段目、二段目として熱的に接続し冷凍機を構成した。1段目のパルス管冷凍機には、周波数の固定の圧縮機を使用した。一方2段目のパルス管冷凍機には、周波数固定と可変の二種類の圧縮機を使用して冷却特性を調べた。特に蓄冷器の改良を重ねこの高い冷却能力を得た。1C-a07:Li(同済大)らは、宇宙空間における希釈冷却を実現するために、空隙径を変えた積層多孔質体を使用し混合室内の3He-4He混合液の相界面を維持するタイプの過程を想定した数値解析を行った。計算では、多孔質内で生じる圧力差に注目した。積層多孔質表面をサイン波形状に整形し表面積を増やすことで、微小重力下でも相界面維持に必要な圧力差の条件を満たすことを示した。装置を傾斜させるなどの工夫をした重力環境下での実証実験を検討している。
大型冷凍システム 1C-p01-03 座長 夏目 恭平
1C-p02:黒澤(KEK) J-PARCのヘリウム冷凍機の長期運用と現状に関する講演。2020年夏には屋外フレキシブル高圧配管部からリークがあり、新品に交換した。その際、3種類の補強方法を並列で実施し、2030年に予定している更新の際に補強の効果を確認する。2025年には真空容器内にある気液分離器の配管の銀蝋施工部でリークが生じた。使用していない系統であったため、気液分離器の外で配管を切断し閉止することで対応ができた。聴講者と銀蝋部のリーク箇所特定方法に関して議論があり、今回は真空容器内の奥まった部分でのリークであり、さらに系統から真空槽ではなく系統から別系統へのリークであったため、箇所特定が難しかった事情について説明がなされた。
1C-p03:Lin(同済大学) 水素液化機(5 ton/day)の液化プロセス最適化のために遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm: GA)を用いた計算に関する講演。2系統7段の圧縮機、液体窒素による予冷、3基の膨張タービン、2個のJT弁を含む複雑な冷凍機プロセスをモデル化した。流量や圧力など23種類の変数を用い、個体数を200、世代数を200、交叉比率を0.7としてGSによる最適化を実施した。その結果、最適化前と比べて、1 kgの水素を液化するのに必要なエネルギー消費量が10.5 kWhから7.98 kWhまで低減できた。聴講者からは、熱交換器内の最低温度差に関する質問があり、本計算では1 K以下にならないように条件付けしていることなどの回答がされた
磁気冷凍 1C-p04-06 座長 宮崎 佳樹
磁気冷凍セッションでは,水素液化用磁気冷凍について3件の発表が行われた。1C-p04:ガド(NIMS)の発表では,有望な磁気熱量効果材料を用いた磁気水素液化システムの評価として,HoAl2,HoB2,ErAl2を対象に,COMSOLを用いたAMRの2次元過渡解析結果が報告された。質量流量を変化させた場合の冷却能力,COP,FOM,水素生成量が比較され,材料ごとの適用温度域や性能が示された。1C-p05:白井(NIMS)の発表では,磁性体駆動方式による磁気冷凍機の投入仕事低減を目的として,磁場勾配分布の設計に関する検討が報告された。磁性体に作用する磁気力と散逸仕事の関係が整理され,安定点を有する磁場分布により駆動時の投入仕事を低減できる可能性が示された。1C-p06:光畑(川崎重工)の発表では,液化水素システムを想定した磁気冷凍サイクルのシミュレーション手法が報告された。JMAGによる超電導磁石の磁場解析,STAR-CCM+による液化水素の流動・伝熱解析の結果を,Amesimを用いた1次元システムシミュレーションに反映した評価例が紹介された。
熱伝達・物性基礎 1C-p07-11 座長 岩本 晃史
1C-p07:國本(岩谷産業)「液体水素用コリオリ流量計に対する流量測定精度の評価」では気泡の影響を受けにくいコリオリ流量計の試作機による流量測定精度の評価を行った。気泡の影響が疑われる流量測定精度の低下がみられた。1C-p08:高畑(NIFS)「液体窒素中の水平上向き面における遷移沸騰熱伝達(2) ~伝熱面サイズの影響」では、膜沸騰および遷移沸騰領域の熱伝達率について伝熱面のサイズの影響について調べた。レイリー・テーラー不安定性の最危険波長によって説明できる。1C-p09:結城(山口東理大)「液体窒素浸漬急冷における金属-樹脂複合T型フィンによる伝熱促進」では液体窒素により冷却される超伝導導体などの冷却性能向上を目的として、沸騰面にT型フィンを2段取り付け、その材料の影響について実験的に調べた。金属-樹脂複合T型フィンが最も高い冷却性能であった。1C-p10:島崎(産総研)「水晶振動子センサーによるJT冷凍機動作ガス流れ監視のための計測系構築」では音叉型水晶振動子を利用してJT冷却回路内の動作ガス相変化の監視を行うため、室温から液体窒素温度やそれ以下の温度までの共振周波数の測定を行った。気相と液相の違いを検知できた。1C-p11:河江(九大工)「PdHx超伝導体中のトンネル水素により形成される新な量子状態」ではPdHxの電気抵抗の温度依存性を実験的に調べた。超伝導転移に伴う抵抗の急激な減少がみられたが大きな残留抵抗が出現した。金属内での水素のトンネル拡散がその原因だと考えている。
計測技術 1P-p01-04 座長 増山 新二
1P-p01:西尾(アルバック)らは、50 K以下においても直接測定可能な圧力センサの検討を行なった。2種類のひずみゲージ圧力センサの特性を調査した結果、個体差はあるものの、校正を行うことで3 K程度までの測定に十分使用可能であると報告した。
1P-p02:町屋(大同大)らは、REBCO線材の安定化銅層の残留応力をX線 (cosα法) を使用して測定した。結果から、銅の降伏応力程度の残留応力が存在していると報告した。
1P-p03:白木原(大同大)らは、REBCO線材のねじり変形下におけるひずみ測定をひずみゲージを貼付する方法で行った。結果から、表層のひずみ値はねじり角と密接に関係していると報告した。計算結果を実験値と一致させることが今後の課題の一つとのことである。
1P-p04:高木(大阪工大)らは、超伝導機器内の磁場分布を磁気光学イメージングと深層学習により推定する方法を検討している。本手法は、極低温、真空、高磁場環境下においても有力であるとのことである。
冷凍システム・要素技術 1P-p05-08 座長 高畑 一也
1P-p05:藤井(KEK)からは、J-PARCのCOMET実験用超伝導マグネットのヘリウム冷凍設備に使われる低温精製器開発について報告があった。開発した精製器は、KEK内部で設計・製作され、非常に安価に開発できたと紹介があった。実際の精製運転では、水分と窒素など系内の不純物を十分に除去することができた。
1P-p06:磯金(愛媛大学)からは、20 K付近で大きな体積比熱を持つ蓄冷材の開発を目的に、過去に20 K付近でピークを示すと報告されたことのあるEr0.5Pr0.5に注目し、結晶構造と比熱の関係についての研究結果が報告された。アーク溶解法で製作した試料を氷水で急冷する工程において、急冷開始温度を調整することで、20 K付近の比熱ピークが再現された。元素分析の結果、ErとPrを均一固溶させることが、比熱ピークの出現に関係していることが示唆された。
1P-p07:高橋(東芝)からは、伝導冷却超伝導マグネットと冷凍機の間に使用される熱スイッチに、固体接触面の着脱を用いた場合の課題であった熱抵抗の低減方法について報告があった。無酸素銅にインジウムめっきした面と高純度アルミに離型被膜層を付けた面の組み合わせが、熱抵抗が小さく、繰り返し着脱に対する再現性も良いことが確認された。
REBCO 導体・コイル 1P-p09-14 座長 馬渡 康徳
REBCO線材・導体の電気的・機械的特性、および測定・解析手法に関する6件のポスター報告があった。
1P-p09: 山口(福岡工大)は、回転機ローターバーに向けた短尺REBCO積層導体における臨界電流評価法として、インジウムシートを介してシャント用の銅板を導体に添設する方法について報告した。この方法により、半田フリーで1kA近い通電時でもクエンチを抑制し、10^(-4)V/m基準より4桁以上高い電界領域まで電流・電圧特性を測定可能であることを確認した。
1P-p10: 田代(福岡工大)は、REBCO線材2枚と銅板からなる複合導体における電流・電圧特性および各層の電流分布について報告した。低電界領域の線形抵抗が電流端子からの距離に依存すること、また超電導層間に銅やハンダなどの抵抗成分を含む積層導体では電流・電圧特性にキンクが現れること等を、通電試験と数値計算により示した。
1P-p11: 丸山(鹿児島大)は、マルチフィラメントY系テープ線材の電流分布を極小ピックアップコイルにより測定する方法について、コイルの巻線形状(巻き乱れ)の影響について報告した。幅5 mmの10分割マルチフィラメント線材で問題となる空間分解能の低下に対し、巻き乱れのある3ターンコイルや20μm径3ターンコイルでも、巻線形状を反映することで測定精度を改善できることを示した。
1P-p12: 川崎(九州大)は、超電導同期モータの永久電流モード運転時に問題となる動的抵抗に関して、複雑な磁場環境下でのREBCOダブルパンケーキコイルにおける動的抵抗損失の巻線内分布について報告した。動的抵抗は巻線の内周端および外周端のターンに集中し、コイル全体の動的抵抗は四端子法測定とシミュレーションで一致した。一方、巻線内分布の定量的再現には課題が残り、解析モデルの改善や動的抵抗の低減策の提案が今後の課題であるとした。
1P-p13: 川岸(九州大)は、ピンプル法によるYBCO線材の剥離試験後の表面をSEM-EDS等で観察し、剥離層・界面別の面積割合および剥離表面の微細組織について報告した。River patternのトレースから剥離起点の一つはYBCO/LMO界面付近であると推定した。また、欠陥での応力集中、微細亀裂の発生、亀裂の成長・進展、およびマクロな剥離へと至る剥離メカニズムを考察した。
1P-p14: 渡辺(JSOL)は、磁性体コアを超電導バルク体で囲んだ解析モデルを対象に、有限要素法のA-Φ定式化とH-A定式化による超電導体内の電流密度分布の解析を行い、非線形反復計算の収束性を評価・比較した結果を報告した。A-Φ定式化では反復回数が少なく高速な傾向である一方、H-A定式化では電気伝導率の上限値が大きい場合でも精度よく解析できることを示した。
超電導材料探索・製造・評価 1P-p15-19 座長 寺西 亮
「1P-p18:石田(産総研)」
Bi2212単結晶の臨界電流密度(Jc)を系統的に評価し、Jcが不足ドープ域(p≃0.12)と過剰ドープ域(p≃0.17)で二つのピークを示す要因を解析した。その結果、Jcはweak collective pinningとstrong pinningの2成分で表され、特徴的なドープ量依存性はstrong pinning成分に起因することを明らかにした。さらに、酸素欠損や擬ギャップ由来の電子状態の不均一性がstrong pinningに関与する可能性が示された。ディスカッションでは、実際の単結晶試料の育成方法や従来の知見からの進展箇所、ドープ量依存性で示されるドーム型の挙動の解釈などについて議論された。
「1P-p19:越沼(イムラ・ジャパン)」
コンビナトリアルケミストリーを用いた高速材料探索により、新規超伝導体AuCu₃型(Ba,Na)Bi₃を発見した。BaをNaで部分置換すると超伝導転移温度Tcが向上し、x≧0.4で最大8.5 Kを示した。Tc向上はNa置換によるホールキャリア導入とフェルミ準位近傍の電子状態密度の増加に起因すると考えられ、新規超伝導体探索におけるコンビナトリアル手法の有効性が示された。ディスカッションでは、ナトリウムを用いての試料合成時の注意点やノウハウ、またコンビナトリアル手法の有用性、今回の材料の今後の展開などについて議論された。
REBCO 導体・マグネット技術 2A-a01-04 座長 小柳 圭
2A-a01:大屋(関西学院大) 大型超電導電力機器用の高温超電導スパイラル集合導体の長尺化に向けたジョイント技術を開発している。線材を突き合わせ基板側から溶接し超電導層側に薄い銅箔を半田付けしており、フォーマにスパイラル巻したサンプルの通電試験において保護層や重ねて巻いた線材の影響が見られた結果が報告された。
2A-a02:和久田(日立) 超電導多層大容量導体の偏流挙動に関して、抵抗とインダクタンスとからなる等価回路モデルの連立微分方程式にラプラス変換を適用して計算を高速化する解析手法について報告した。超電導特有の非線形な電流電圧特性についても、通電電流値を時間変化させたときの発生電圧として本手法で扱えるのではとの議論があった。
2A-a03:上原(北大) ホールセンサアレイ計測によるREBCO線材の非破壊検査の高速化を目的とした、U-Netを用いた機械学習手法の適用について報告した。テープの局所欠陥を模擬したモデルで学習データを作成して装置の最大速度相当で搬送したケースで臨界電流密度分布を解析した。
2A-a04:今川(NIFS) 局所的に劣化したREBCOコイルの熱暴走挙動を調べる実験結果について報告した。長さ0.1m部分を事前に劣化させた線材に電圧タップを10点設けてE-J特性を評価した結果、負荷率増加に伴いn値が低下し高負荷率ではn値4程度に収束する結果となった。
接合および関連技術 (1) 2A-a05-08 座長 伊藤 悟
2A-a05 大倉(阪大):化学的表面活性化によるREBCO線材Cu/Cu接合の電流移行挙動を電圧分布から評価し、SC–SC接合とSC–Hastelloy接合での差異を示した。特に後者では電流偏りに起因する電圧上昇とその後の低下が観測され、本現象の一般性についても議論された。
2A-a06 武田(NIMS):EuBCO超電導接続の抵抗および臨界電流の磁場角度依存性を評価し、4 K・0.1 Tで10-12 Ω程度の低抵抗を得た。臨界電流は磁場角度の変化に伴いローレンツ力に対応して低下し、B//c(Force-free状態)で最大、B//abで最小となる傾向が示された。
2A-a07 世良(九大):REBCO線材の半田フリー音波接合の接合抵抗率を4.2–77 Kで評価し、温度低下に伴う抵抗低減と試料間で共通の温度依存性が示された。この起源が線材内部の界面抵抗に由来するとの考察に対し、既存データとの整合性について議論がなされた。
2A-a08 佐野(青学大):低濃度FF-MOD法溶液によるREBCO超電導接合について、溶液条件や焼成条件を変えて微細組織と電気特性を比較し、転移挙動や臨界電流の差異を評価した。転移は確認されるが残留抵抗が大きい例や、緻密化や治具材質の影響が示され、プロセス条件の重要性が示唆された。
REBCO 膜構造解析・評価 2A-p01-06 座長 三浦 峻
「2A-p01、2A-p02:荒木(東芝 総研)」から2件の発表があり、15 T磁界中で市販REBCO高温超伝導線材に臨界電流まで4秒以内に通電する実験を行い、臨界電流より十分低い電流領域でスパイク状の電圧が発生する現象が観察された。その電圧はナノ領域での電流迂回に起因し、その特性よりナノ構造均一性を評価できる、という考察が報告された。この発表の詳細は、T. Araki: Cryogenics, 156 (2026) 104297で論文として報告されている。会場からは、なぜナノオーダーの欠陥と同定できるのか、という質問があり、またミクロンオーダーの可能性もある、という指摘もあった。「2A-p03:亀谷(フロリダ州立大)」は、PLD-REBCO線材のナノ組織(ABF-STEM像等)と臨界電流密度の相関を包括的に評価した。77 KのJcからのリフトファクタでは20 K等の低温のJcを推測できないこと、CuOxとab面オフセットが悪影響を及ぼしていること等、多くの重要な知見が示された。STEM像でBHOがab面に広がったような形状のサンプルがあり、会場からBHOの添加量が多い場合には、そのような形状になることがある、というコメントがあった。この発表の詳細は、A. Xu, et al.: IEEE TAS, 35 (2025) 6603206、およびA. Xu, et al.: SuST, in-pressで論文として報告されている。「2A-p04:矢野(九大)」は、REBCO膜にBMOのM元素(HfとZr)をマルチドープし、BMO粒子に両方の元素が含まれている可能性を示した。マルチドープすることで高密度・微細化させることを検討しており、その微細化するメカニズムについて質問があった。「2A-p05:松本(名大、九工大)」は、REBCO膜のナノロッド周囲の歪場を解析し、その歪による酸素欠損とTc分布を導入したTDGLシミュレーションの結果を報告した。結論として、転位がたくさん入ることでナノロッド周りの局所歪が緩和され、転位が少ないと、緩和されず大きな歪が発生する、と報告された。歪による特性劣化は、Tcに近い65 Kや77 Kの温度ではその影響は大きいが、4.2 K等の低温ではその影響は小さくなる、と説明された。これは人工ピンを高濃度に導入することで77 KのJcが低下しても、4.2 KのJcは高くなる、という特性を説明する知見と考えられる。「2A-p06:長村(京都材料科学研究センター)」は、REBCO超伝導テープの低温下における引張試験の推定される偏差(タイプBの不確かさ)について報告した。長さや断面積等の各々の測定量の測定上の不確かさを合成してタイプBの不確かさが導かれることが示された。本セッションにおけるすべての発表で、活発な質疑・討論が行われた。
電力応用 (1) 2B-a01-04 座長 東川 甲平
2B-a01:手塚(山梨大)らは、超伝導ワイヤレス電力伝送の耐電力を改善するための送受電コイルの基礎検討について報告した。渦電流と臨界電流の関係から耐電力を定義し、内径の大きなコイル、またパンケーキコイルよりはソレノイドコイルが有利であることを明らかとしていた。
2B-a02:井上(岡山大)らは、伝導冷却装置を用いた超伝導非接触給電システムの電力伝送試験について報告した。室温部から5cmだけ離れた場所にコイルを配置するというチャレンジングな取り組みにも関わらず、コイルの冷却に成功するとともに、1kWの給電にも成功し、その際の伝送効率は94.8%とのことであった。ただし、同効率の計算には冷凍機の消費電力が含まれていないため、今後はシステム全体としての成立性に注力していくということであった。
2B-a03:富士原(東北大)らは、高温超伝導コイルを用いたパッシブ型アークレス直流遮断器の設計指針と基礎検討について報告した。直流で問題なる電流遮断の鍵となる技術となる可能性がある。一方、コンデンサとの共振を利用するため、列車運転時の過渡現象への影響がないか、などの質問があった。
2B-a04:緒方(テラル)らは、アルミ押し出し成形用750kW級時期加熱装置の開発の中で、製造工程における実証試験について報告した。実際の様子が動画で示され、試料に応じてクライオスタットの位置を調整する様子、試料を回転させて加熱する様子、その際の温度分布が想定通りのテーパー加熱となっていることが示され、迫力のあるものであった。開発した加熱装置は、実際の生産現場にも据え付けられ、加工も良好で、製品検査もパスしており、そのアルミ製品は無事に市場に流通しているということであった。
電力応用 (2) 2B-a05-07 座長 小川 純
2B-a05:神田(中部大)航空機用の直流超伝導ケーブルを想定した重量に関する研究に関する報告があった。漏れ磁界対策として直流ケーブルでは通電方向を交互にすることにより漏れ磁界を抑制していた。実験結果に基づいた直流ケーブルの性能と交流ケーブルの比較を行い直流ケーブルの優位性についての報告があった。
2B-a06:新谷(中部大)LTspiceを用いた高温超伝導直流ケーブルの短絡電流による解析を超伝導電流と常伝導電流の並列回路としてパルス電流通電時の挙動についての報告があった。
2B-a07:谷貝(上智大)液体水素パイプラインに設置することを想定した直流大電流送電ケーブル用の超伝導降圧コンバータの基礎特性について検討が行われた。超電導コイルをインダクタンスとして用いた時の挙動についての報告があった。
REBCO 線材評価・鉄系線材 2B-p01-03 座長 小田部 荘司
2B-p01 東北大の鈴木らはフッ素フリーで作られたMOD REBCO線材の機械特性と電気特性を報告した。従来のTFA-MODに比べて高速に作れるので安価になる可能性があるが、まだ特性評価は進んでいない。ここでは5つの試料について引っ張りに対して臨界電流が0.25%程度で劣化する様子が報告された。またその原因は銅層の亀裂によるとした。
2B-p02 東北大の土屋らは、39 T, 500 Aをパルスで実現して臨界電流密度測定ができる装置を開発し、その測定結果が従来の定常磁場中での測定と同じであるということを示した。39 Tではフラットトップと呼ぶように、最終的には補助の銅コイルに電流を流して磁場を100 msほど一定に保つ工夫をして測定ノイズを減らしている。温度上昇があるのでそれを抑えるための工夫などが報告された。
2B-p03 東北大の坂上らは鉄系超伝導体(Ba, Na)Fe2As2の臨界電流特性について報告した。丸型線材を製作しており、将来は核融合炉での補助的な利用も検討している。また液体水素温度での利用を目指して20 K付近での臨界電流値の向上を図っている。その結果(Ba,K)Fe2As2に比べて臨界温度は2 Kほど小さいがB-T平面におけるdB/dTは同じくらいであり、今後の性能向上が期待された。
FLoW導体 2B-p04-06 座長 土屋 雄司
2B-p04:平野(NIFS)らは、Kプログラムとして採択された「3次元立体形状超伝導マグネットを経済的に実現できる基盤技術の構築」プロジェクトの全体計画を報告した。外径10 µm級の極細素線を多重撚線化したFLoW(Flexible Like a Willow)導体と、3D金属プリンタ製の耐電磁力サポートフレームを組み合わせた新たなマグネット構造の開発を目指す5年計画が示された。モデルコイルはCu、次いでMgB2、並行してBi2212のFLoW導体の開発を進める方針が述べられた。2B-p05:菊池(NIMS)らは、Bi2212極細線の開発現状について報告した。連続的な細線化技術が開発の鍵であり、金線等での伸線加工などの技術が活用できる点が述べられた。Bi2212極細線を10気圧程度中で加圧焼成することで空隙が減少したことが示された。2B-p06:三戸(NIFS)らは、FLoW導体を3Dプリンタ製アルミニウム合金サポートフレームの溝部に埋め込んだFLoWマグネットの試作計画について報告した。エポキシ真空含浸により極細素線を補強し、直径50-100 cmサイズでは電磁応力分布に問題はないとした。作製時に巻線には張力をかけないこと、素線間の転流について議論がなされた。
液化水素安全 2C-a01-03 座長 槙田 康博
鉄道輸送される液化水素コンテナから水素が漏洩・噴出した時のシミュレーションが2件、液化水素容器の断熱真空槽への外部リークの模擬試験の結果が1件、報告された。
2C-a01:宮崎(鉄道総研)は、ANSYS Fluentを用いて、液化水素1 L/sec相当の噴出が風速2.9 m/sec一定の下で発生した時の10 sec後の水素の広がりを 50×10×10 m3の領域で解析したことを報告した。液化ヘリウムとは異なり、潜熱が大きいためか放出された液化水素は地面に沿って広がり17.5 mまで達する結果が示されていた。
2C-a02:八島(鉄道総研)はFLACSを用いて、全長150 mの単線トンネル内で静止したタンクの片側端面の継手から6.3×10-5kg/secで漏洩した水素ガスの挙動(滞留など)について解析した結果を報告した。漏洩した水素ガスはトンネル天井に沿って広がり、下方に広がる様子はなく、液化水素の漏洩とは挙動が異なっていた。また着火加減濃度4 vol%を越えた個所があったので、着火を試行したところ火炎伝播することなく自然鎮火する結果となった。
2C-a03:高田は液化水素容器の断熱性能を劣化させる真空断熱層への外気漏洩の挙動を解析するために、模擬実験を行った。液化水素貯槽内に、外気が侵入する真空断熱層を模擬する真空容器を挿入し、そこに乾燥空気を注入して冷却壁への吸着も含めた真空劣化の挙動を測定していた。
低温超電導線材・導体 2C-a04-7 座長 淡路 智
本セッションは1件(2C-a07)がキャンセルとなり3件の報告となった。2C-a04:伴野ら(NIMS)は内部スズ法におけるTiとZn添加効果について報告した。SnよりもNbへのTi添加がJc向上には有効であるが、同時に線引き加工が難しくなる問題がある。Zn添加はNb3Sn形成や析出物生成に関して大きな影響がないが、高強度化としてのメリットがあるとした。2C-a05:菱沼ら(NIFS)はNb3Al細線を用いた多重撚り線について報告した。0.05mmのNb3Al単芯線を3x3x3の多重撚りしたものと27本撚り線を比較した結果、多重撚りの方がIcが高くなることが分かった。2C-a06:海老沢ら(古河電工)は、Nb3Sn多重撚りを用いた核融合用CIC導体における加工による劣化挙動を調べるため、3本の一次撚り線を治具で横圧縮して変形挙動及びIc特性を調べた。DT法、ブロンズ法、CuNb強化線材等について、4次撚り線後に取り出した線材と同等以上の変形量まで圧縮した。圧縮に帯する変形はDT法が大きく、他は概ね同じとなった。4次撚り線と同等の変形では、DT法線材以外は大きなIc低下が見られなかったが、DT法線材では測定時にクエンチが頻発しIc測定が困難となった一方で、他の線材は大きな低下が見られなかった。これはバリヤ層の損傷により安定化銅のRRR低下によるものと考えられる。
磁気分離 (1) 2C-p01-03 座長 横山 和哉
2C-p01:三島(福井工大)らは除染土壌の減容化について,セシウムを保持する常磁性の2:1型粘土を淘汰管と高勾配磁気分離を組み合わせた手法で分離することを試みた。新たに最大1.5Tを発生することができる永久磁石回路を製作して淘汰管磁気分離を行った結果,2:1型粘土を選択的に分離できることに成功した。
2C-p02:梶村(神戸大)らは安価な永久磁石を用いた磁気分離において,分離性能を向上させるために磁気分離モジュールを直列に接続する手法を提案し,常磁性粒子であるヘマタイトを用いて最大48段モジュールでの実験を行い,段数と分離率の関係を示した。さらに,球型磁性フィルタの直径が分離率に及ぼす影響を調査した。
2C-p03:野村(福井工大)らは使用済み紙オムツの破砕工程で生じるマイクロプラスチックの粒径などが磁気シーディングに及ぼす影響について調査した。排水中の粒子を光学顕微鏡で観察した結果,単独粒子の平均粒径が16.3 μmであることを確認し,効果的な磁気シーディングが可能であることを示した。
MgB2マグネット技術 (1) 2C-p04-06 座長 松本 明善
2C-p04:許 航(明治大)は1 MJ級電磁力平衡ヘリカルコイル(FBC)の製作に向けて、MgB₂ツイストケーブルの曲げひずみが臨界電流特性に与える影響を評価した。曲げひずみの影響を評価するため、熱処理後のケーブル短尺サンプルに対し、20 K・自己磁場条件下で四端子法による臨界電流測定を実施した。結果、曲げ半径170 mmでは臨界電流が直線状態の約90%に低下し、このときの曲げひずみは0.19%と計算された。この低下率は線材メーカーの7 T磁場中における単線測定結果とも概ね一致している。
2C-p05:谷貝 剛(上智大)は直径50 μmの極細MgB₂素線を49本撚り合わせた集合導体を対象に、修正スパース・タブロー法(RST法)を用いて電流分布解析を実施した。素線の軌道を断面画像処理と回転変換によりモデル化し、全枝数18,426本、(37,588)²の大規模電気回路モデルを構築した。ステップ状電流通電直後の過渡解析の結果、通電初期において電流分布が収束値の0.2〜1.7倍と大きく不均一となり、最外層の素線に電流が集中することが示された。
2C-p06:中山 武(JSA)は線径75 μmのMgB₂極細線を用い、直径20 mmの小径超電導コイルを試作して通電特性を評価した。計15回の通電試験すべてで全巻線の超電導状態を確認し、1時間の長時間通電でも安定動作を維持できたと報告した。冷凍機停止後の再冷却でも再現性が確認された。本成果は極細MgB₂線による小径巻線構造の安定通電を実証するものであり、小型超電導モータや水素関連機器への応用が期待されると報告を行った。
加速器 3A-a01-07 座長 今川 信作
・LHC高輝度化アップグレード用ビーム分離双極磁石の実機製造と性能評価に関する2件の発表において,磁場精度とクエンチトレーニング回数などの要求仕様を満足すること,クエンチアンテナを用いて前兆現象の検出にも成功したこと,磁場精度に関する磁性体の影響の解析が実験と良く一致することなどが報告された。質疑では,コイルの大型化により電磁力が増加した対策としてプリストレスの管理が重要であったこと,前兆現象の検出の活用は今後の課題であることが議論された。
・加速器用HTSマグネットの開発に関する発表では,REBCOテープ線と金属テープを並列に接続した試験を実施し,REBCO丸形ケーブルのコアへの転流効果を評価する計算プログラムを検証したこと,このプログラムを用いて実導体(多層ケーブル)の解析を実施することが報告された。質疑では,コアとREBCOテープ線の電気的接触の改善方法について議論があった。
・高温超電導アンジュレータの概念設計と2D磁場解析の結果が報告された。3D解析は今後,実施される。質疑では,電流分布の評価にn値モデルを使う必要があるのかが議論された。
・アルミ安定化超伝導線材の製作技術に関する2件の発表では,CERNとも協力してアルミ安定化導体の製造技術を維持する取り組みを始めており,KEKでは,試作を計画するとともに押出成形など製造条件の最適化に要する時間の短縮を目的に解析ソフトを用いたシミュレーションに取り組んでいることが報告された。質疑ではHTSにアルミ安定化を付加する目的や許容温度などが議論された。現状の活動はNbTi線材を対象として進めており,HTS線材は今後の課題であることが回答された。
・ヘリウムガス雰囲気中でガンマ線照射されたTELENE樹脂の曲げ特性の発表では,TELENEは,未照射では優れた延性を示すのに対して,数MGyの照射によって延性が低下することが報告された。一方,エポキシ樹脂CTD-101Kは破断ひずみが20 MGyの照射後でもほとんど低下しないことを報告された。質疑では,延性の低下がマグネットの性能にどう影響するのかについて議論があった。
核融合 3A-p08-10 座長 菅野 未知央
3A-a08で北大の野口らが日米科学技術協力事業(核融合分野)の申請に向けた準備状況の報告があった。日本側は、北大、NIFS、東京農工大、岡山大が、米側はFSU/NHMFL、MITが参加して、高温超伝導小型核融合炉用マグネットの実現に必要な開発課題の解決を目指している。REBCO導体の中性子照射特性もスコープに入っているが、具体的な試験内容は今後検討されるということだった。3A-a09でStarlight Engine社の岩井らが、FAST装置用HTS-TFマグネットの機械的支持に関する検討について発表した。保守性を考慮してTFコイルの数を12個に減らした設計でも、磁場の空間リップルと電磁力支持の条件を満足する解があることが示された。3A-a10で北大の遠藤らがパルス通電時の積層型HTS集合導体の電流分布の三次元有限要素法解析について報告した。ツイストをかけることで、隣接する線材同士の影響が低減され、中心付近の線材にも電流が流れることを示した。現在のモデルではターミナル抵抗は考慮されていないとのこと。
回転機 (1) 3B-a01-04 座長 中村 武恒
九大の川崎ら(3B-a01)は、3本並列導体によるREBCO三相電機子コイルが、回転磁界中において均一な電流分流となることを、永久磁石を用いた回転子を用いて実験的に検証した。特に、40 Hz(回転数2400 rpm)において電機子コイルへ50 A通電した際に均一な電流分布が実現されていることを示した。
九大の佐々ら(3B-a02)は、電動航空機用の全超電導モータを対象として、使用するREBCO線材の臨界電流値の向上が、モータの出力や交流損失にどのような影響を及ぼすかを解析により示した。特に、臨界電流値が元よりも120%だけ向上した場合、出力密度が25.2 kW/kgから32 kW/kgに上昇する一方で、交流損失も117.8 kWから155 kWへと上昇し、トレードオフの関係となることを定量的に示した。
吉川技研の吉川(3B-a03)は、燃料電池車(FCV)に搭載する、液体水素冷却かつ5Nの高純度アルミ巻線を使用した18000 rpmの高速アキシャルフラックス型モータ及びそのシステムの設計に関する発表を行った。また、永久磁石による磁気カップリングを液体水素タンクの内外でのトルク伝達に使用するなどのコンセプトも示した。
東芝の小柳ら(3B-a04)は、永久磁石及びREBCO線を使用したリニアシャフトモータを設計・製作し、特性試験を行った結果を発表した。ストローク長130 mmの範囲を、約1 Hzで滑らかに往復運動しており、超電導コイル部分にピーク電流値として約8.5 Aを通電した際には、推力測定値として53 Nが得られることを示した。
回転機 (2) 3B-a05-10 座長 大屋 正義
3B-a05:中村(京大)らは、高温超電導誘導同期モータ(HTS-ISM)の始動電流に関する解析結果について報告した。HTS回転子のヒステリシス回転特性を利用することで最大始動電流を207Aから111Aに低減できる可能性を示した。
3B-a06:Caio(京大)らは、HTS-ISMのかご型巻線に使用する超電導線材の特性バラツキが回転特性に及ぼす影響を解析した結果を報告した。Icのバラツキがモータ性能に及ぼす影響は小さいことを示した。
3B-a07:サットン(京大)らは、永久磁石可動子にHTS短絡コイルを組み合わせたHTSベアリングに対して、永久磁石とHTSかご型巻線のハイブリット可動子構造を提案して基礎検証した結果について報告した。
3B-a08:三瓶(京大)らは、あやとり巻線法を用いた高温超電導回転子の磁束補足特性に関する実験結果を報告した。かご形巻線方法と比較して接続部が低減され、モータ効率が向上する可能性を示した。
3B-a09:山本(京大)らは、電導航空機向けHTS-ISMのスケールダウンモデルを試作し、冷却機能を損失した場合の冗長性を実験的に検証した結果を報告した。
3B-a10:寺尾(京大)らは、REBCO界磁巻線型超電導同期モータの連続負荷運転試験結果について報告した。負荷変動に対しても安定な運転が確認された。
バルク作製 (3)・着磁・応用 3B-p01-06 座長 原田 直幸
3B-p01米内(岩手大)からは、IG 法によるREBCO バルクの育成において、種結晶、前駆体、液相源の配置を検討した結果が報告された。前駆体配置の変更により、RE211 の粒径や体積分率を制御することができ、結晶成長領域の拡大も見られた。また、配置の条件や液相源の組成調整の他に、より精密な熱処理温度の調整の必要がある。
3B-p02芦生(岩手大)からは、Ag 添加SmBCOシードプレートを用いてSDMG法によりAg添加GdBCOバルクを育成し、シードプレートから前駆体の高さの半分程度までの結晶成長が確認され、SDMGバルクはTSMGバルクに比べて同等か、やや高い捕捉磁場を示したことが報告された。
3B-p03元木(産総研)からは、Single-Direction Melt Growth (SDMG) 法においてREBCO のCu サイトを置換する希薄不純物を添加し、外径約25mm、高さ7mm程度のSDMG バルクを作製したことが報告され、均質性の高い円形の捕捉磁場分布が得られ、中低温域での捕捉磁場の改善効果が示された。
3B-p04松永(青学大)からは、SDMG法で大型溶融バルクを作製し、直径50 mmの成型体から作製したGdBCO溶融凝固バルク(直径44mm)ではTc midは92K以上、ΔTcはおおむね1K、77Kの最大捕捉磁場は1.13Tを示し、成型および前熱処理条件の改善により更なる捕捉磁場特性の向上が期待できることが報告された。
3B-p05横山(足利大)からは、あらかじめ弱い磁場を印加した後にメインの磁場を印加するFAVS法の数値解析について報告があり、REBCO バルク体のJc の不均一性を考慮した解析モデルで、Jc が低いGSR 部から磁束が侵入し,Jc が高いGSB 部に捕捉される様子を再現できることが示された。
3B-p06岡(理研)からは、コンデンサ容量が120 mFの電源を用いたFAVS法とIMRA法において、バルク表面で2.80T、磁極表面で1.81Tが計測されたこと、また40mFの電源を用いたIMRA法(5回)では中央部の磁場分部に凹みが見られたが磁極から距離を取れば均一な磁場が得られることから、超小型ポータブルNMR磁石として利用できることが報告された。
バルク作製 (1) 3C-a01-04 座長 木内 勝
3C-a01:伊豫(産総研)らは、RbおよびCsとフラーレンC60を直接混合し、200~400 ℃の熱処理で作製した焼結バルクの磁化Jc特性について報告した。特に250 ℃・1 hで熱処理した焼結バルクは、20 K、5 T以上の高磁界領域においてMgB2バルクを上回るJcが得られることを示した。一方で、原料コストの高さが課題として挙げられた。
3C-a02:八島(岩手大)らは、MgB2バルクへのAg添加効果について報告した。Ag添加による粒径変化は確認されなかったが、高磁界領域においてピンニング特性のわずかな向上が示された。参加者からは、Jcが既報値より1桁程度低いことから、測定結果の再確認が必要との指摘があった。
3C-a03:野尻(青学大)らは、酸素量を低減した微細B粉末を用いて炭素添加MgB2バルクを作製し、Jc特性への影響を調査した。15 Kの高磁界領域では、炭素添加量の増加に伴いJcの劣化が抑制されることを示した。
3C-a04:那須川(青学大)らは、Premix-PICT拡散法によりTiB2添加MgB2バルクを作製し、TiB2粒径がピンニング特性に及ぼす影響を評価した。TiB2添加による臨界温度Tcへの影響は認められず、特に48 hのボールミル処理を施したTiB2を添加することで、無添加バルクの約2倍のピン力密度が得られることを示した。
デバイス応用 (1) 3C-a05-10 座長 明連 広昭
デバイス応用(1)では、単一磁束量子(SFQ)論理回路や断熱量子磁束パラメトロン(AQFP)回路およびその無冷媒冷凍機による冷却に関する発表があった。
SFQ論理回路は特にニューラルネットワークのハードウエアアクセラレータへの応用に関する講演が4件であった。3C-a05:韓(横国大)等は、SFQ数の減少を担う従来のRL回路をSFQストレージループを接続することでリーク速度可変のスパイキングニューロン回路の設計および正常動作を報告した。残りの3件はSFQ論理回路でReLU関数を実現する回路に関する講演であった。3C-a06:上野(横国大)等は、簡単なDFFとNotゲートを組み合わせたReLU回路を提案し、シミュレーションにより100 GHz以上の最大動作周波数を報告した。数表現に2進数パルス列内の”1”の存在確率を用いる演算方法をストカスティック(SC)演算という。3C-a09:福崎(横国大)等は、超伝導乱数生成器の周波数同期を用いたSCユニポーラReLU回路を提案し、シミュレーションにより正常動作を確認した。3C-a10:多川(横国大)等は、SCユニポーラReLU回路に加算ユニットと比較ユニットを付加することによりReLU関数のバイポーラ表現への拡張が可能であることをシミュレーションにより示した。
3C-a07:岡本(横浜国大)等は、AQFP回路を用いてフィードバックループを持つマイクロプロセッサにおいて、マルチスレッド設定を導入して高スループットを実現する設計方法を提案した。
3C-a08:宮嶋(NICT)等は、無冷媒小型冷凍機へのSFQ論理回路の実装技術に関する報告を行った。コネクタのジュール熱を抑制できるμ-DSUBコネクタを用いたパッケージに80bitのシフトレジスタ(SR)が2個搭載されたSFQ論理回路チップ上での発熱の影響を検討した。温度ステージやチップ上のトンネル接合のギャップ電圧変化によるチップ上の温度を評価することにより温度ステージの温度上昇に比較してチップ上の局所的な温度上昇が問題であることを報告した。
デバイス応用 (2) 3C-p01-06 座長 宮嶋 茂之
3C-p01および3C-p02: 廿日出(近畿大)からは連続する2件の講演において、高温超電導SQUIDを用いて油中に存在する不純物を検査するシステムに関する報告があった。リング状の永久磁石を微小金属が通る際の磁気信号を検出すシステムを提案し、原理実証を行った。また、微小金属が永久磁石に吸着されないための条件を数値解析により示した。
3C-p03: 掛谷(京都大)からはBi2212固有ジョセフソン接合テラヘルツ放射周波数変調に関する報告があった。ジョセフソン接合への変調バイアスの周波数が1 GHz以下の領域ではスペクトルの低周波側において大きな変化があることを示した。
3C-p04: 赤松(WPI-QUP)からはTi/Auの2層薄膜からなる超電導繊維端センサ(TES)の超伝導転移特性に関する報告があった。Tiの厚みを固定した状態でAuの膜厚を変化させ、膜厚比に対する2層薄膜の超伝導転移温度の変化について示した。
3C-p05: ホウ(山梨大)からは高温超電導体を用いたフィルタに関する報告があった。1つの基板上に複数の帯域のバンドリジェクションフィルタを作製し、実験では数値解析での周波数スペクトルとよく一致している結果が得られた。
3C-p06: 有田(九工大)からは磁束ピンニングを利用した超電導リザバーの数値解析に関する報告があった。4つのタスクについて磁場、電流により非線形性・記憶特性が調整可能であると示した。また、実装可能性に向けてモデルの大型化を行った場合でも十分な精度があることを示した。
加速器向けNb3Sn線材・導体・薄膜 3P-p01-03 座長 王 旭東
3P-p01:毛利(大同大)から、Nb3Sn線材の横圧縮に対する応力解析が報告された。想定している横圧縮は素線間が電磁力によって圧縮される方向の力である。今回はシンプルな構造としてフィラメント1本のNb3Sn素線に対して、剛体から圧縮力を加えて、剛体と素線の接触面を狭めて解析が行われた。接触面が狭まることで素線表面へ応力集中がみられるが、内部のフィラメントへの応力は低下する傾向が示された。今後はフィラメント数を増やして解析を進められる予定である。
3P-p02:金子(上智大)から、スタックした平角Nb3Sn線材をエポキシ樹脂で含浸したサンプルに対して、横圧縮力を印可した際の変形について報告された。平角Nb3Sn線材を用いた超伝導四極磁石の開発に対して、機械特性の要素試験として行われたものである。平角Nb3Sn線材の降伏応力は32MPa程度であった。含浸後のスタック線材は90MPaで20m以上変形したため、目標の100MPaで10m以内に収まらなかった。サンプル間の結果でばらつきが大きいことから、サンプル寸法が不均一であることなどが問題と思われる。
3P-p03:井藤(KEK)から、蒸気拡散法で製作されたNb3Sn空洞の性能について報告された。Nb製の空洞に高温環境下でSnを蒸発させて、空洞内面でNbと拡散反応させてNb3Sn膜を形成されている。Snの量や拡散を制御する治具の調整により空洞のQ値が向上した。今後は成膜条件の最適化をさらに進められる予定である。
接合および関連技術 (2) 3P-p04-05 座長 武田 泰明
3P-p04: 田村(東北大)らは、インジウム圧接によるREBCO線材間の低抵抗接合において、先行研究で指摘されていた低温・高磁場での抵抗値の上昇について議論した。100℃加熱により接合界面のCuIn2層を成長させた場合、抵抗値自体は上昇するものの、上記の高磁場による抵抗上昇の傾向は加熱前と同程度であったため、その起源は単純なCuIn2層の成長では説明できないことが示唆された。
3P-p05: 佐藤(東北大)らは、REBCO線材における層間抵抗について議論した。特にCu/Ag層間抵抗に注目し、REBCO線材からCu層をエッチングにより除去した試料で実験を行った。電流リードをREBCO層側に配置することで層間抵抗と接合抵抗に相関がみられる結果が得られることがわかった。これは線材のAg層が線材の側面にはほぼ形成していないためであると考えられる。
MgB2線材 3P-p06 座長 児玉 一宗
3P-p06:藤井 (NIMS) は、Ex situ法によるAlシースMgB2線材の開発について報告した。比重の小さいAlシースの適用により、電動航空機など軽量性が求められる用途で優位となる。Al合金を適用してシース硬度を高めることで、加工時の粉体への圧縮力増強が起こり高Jc化されることを見出した一方、融点低下によるMgB2焼結時の望ましくない反応が誘起されるトレードオフもあり、適切な合金の選択が重要とのことであった。
超電導マグネット技術 3P-p07-08 座長 井上 良太
3P-p07 :明治大・NIFSのグループから,冷凍機冷却システム内に設置予定のAC-DCコンバータの通電特性について報告があった。低温環境におけるAC-DCコンバータの通電特性については,先行研究において報告されたコンバータを構成する素子の低温環境下における導通特性測定試験結果から概算された。
3P-p08 :明治大のグループから,冷凍機冷却システム内に設置予定の非接触給電による電流リードについて報告があった。非接触給電部に用いるフェライトコアの冷却の有無が自己および相互インダクタンス,結合係数に与える影響について報告された。
回転機 (3) 3P-p09-12 座長 寺尾 悠
本セッションでは合計4つの発表があった。
九大の川崎ら(3P-p09)は、回転機の電機子巻線に使用するREBCO線を3本並列導体にして転位させた構成とした際の転位パターンを工夫することで、バックヨークにおける磁場の変動の影響を上手く相殺できることを示した。
九大の井上ら(3P-p10)は、REBCO電機子巻線に使用する並列導体において、転位手法及び相間部の接続を工夫することにより、電流の均流化を実現出来ることを有限要素法解析により示した。
九大の判田ら(3P-p11)は、超電導回転機の界磁巻線に使用する鞍型コイルに関し、コイルの短軸化を目的として線材ひずみ評価指標にflatwise曲率を導入し、その計算結果に基づいてコイルを実際に作成して評価した結果、巻線や曲げ・ねじりによる劣化が見られないことを示した。
東北大の奥村ら(3P-p12)は、回転磁界中における鞍型のMgB2コイルの回転磁界中における交流損失の有限要素法解析を行い、レーストラックコイルよりも損失が小さくなったこと及び、数値解析手法を工夫することで計算時間が約1時間程度と比較的短時間で3次元解析が可能であることを示した。
回転機 (4) 3P-p13-15 座長 佐々 滉太
3P-p13:山口(福岡工大)らは、HTSかご型回転子誘導機と銅かご型回転子誘導機において回転子を拘束した条件でトルク特性などを比較した懐石結果を報告した。HTS回転子において高トルクが得られることを確認した。
3P-p-14:後燈明(関学)らは、回転機の界磁コイルへの交流誘導通電の適用に向け、2層の貼り合わせREBCO線材を対象とした交流誘導通電試験の結果を報告した。2枚の線材に流れる電流において偏流現象が見られた。
3P-p15:大淵(関学)らは、航空機用超伝導ケーブルの評価試験設備の実現に向けて整備した、水素ガスの液化および液化水素中における超伝導線材の通電特性の評価を行う試験装置による通電試験の結果を報告した。液化や通電電流の測定は行えたものの、交流誘導による発熱により超伝導特性が低下し、通電電流が低下することを確認した。
バルク作製 (2)・薄膜 3P-p16-19 座長 岡 徹雄
大会3日目の午後に「バルク作製 (2)・薄膜」と題して、上記4件のポスター発表が行われた。バルクについては新しい組成のMgB系のバルクをその製法による性能・材質変化と、捕捉磁場性能に及ぼすバルク形状の状態を実験的方法によって論じた発表がなされていた。従来法によるバルクの性能が安定しつつある中で、リング形状にして捕捉磁場性能の向上を図るもの、製法に違いによる材料性能と特性の相違に言及した発表があった。材料性能に及ぼす薄膜中のピン止め効果を引き出す微細組織について、多方面からの製法と解析、分析が行われており、論文投稿が期待される。磁場発生を永久電流モードによって引き出すコイルとしての応用とその独特な手法が提案されて実際に計測されており、今後の大型化や強磁場化が期待される。
磁気分離 (2) 3P-p20 座長 三島 史人
3P-p20 赤澤 輝彦 神戸大
発表内容としては、電場と磁場を組み合わせることで導電媒体である塩水にローレンツ力を付与し、その反作用により媒体中の絶縁物質(本発表ではトビコ、マイクロプラスチック、油滴を模擬)を偏在化させる装置の開発について報告でした。特に、分離効率の向上を目的として、矩形流路内に整流板(仕切り板)を配置し、その効果について流体解析から得られる予測と実験結果との比較検証を行っていた点が特徴的でした。電磁力を利用した分離手法は独創性が高く、今回発表のアプローチも新規性はあり評価できる。一方で、分離効率に影響を及ぼす外乱要因が多く存在しており、それらの要因解明についてはまだ十分とは言えず、今後の課題として残されている印象を受けた。発表自体は丁寧でわかりやすく、説明の流れも明確であった。質疑応答においても適切に対応しており、理解の深さが感じられた。電極部におけるガス発生が分離力低下に与える影響について質問したところ、電極の形状や配置、電流条件の最適化により気泡発生を抑制しているとの回答が得られた。ただし、本分野に精通した立場から見ると、ガス発生に関する考察やその影響評価についてはやや説明が簡略であり、追加の検討余地があると感じられた。一方で、一般的な聴講者にとっては十分に理解可能な回答であったと考えられる。