2025年春季低温工学・超電導学会研究発表会 セッション報告

12月9日(火)
A会場

高エネルギー加速器 (1) 1A-a01-04 座長 諏訪 友音

1A-a01:土屋(KEK)らは、SuperKEKB用のHTS 6極マグネット内に設置できる補正2極マグネットの試作開発の現況を報告した。溝付き樹脂マンドレルを用いたREBCO線材の2層巻コイルを試作した。77 Kの臨界電流が劣化し、樹脂マンドレルと線材の熱収縮差が原因と考えたため、ステンレス製マンドレルの試作検討を始めていると報告された。
1A-a02:王(KEK)らは、加速器マグネット用として開発された、銅コア線にREBCO線材を巻き付けた丸形ケーブルについて報告した。REBCO層を中立軸付近とするためにREBCO線材の銅メッキ厚さを不均一とした線材を用いることにより、従来よりも小さい1.9mmの銅コアに巻き付けても臨界電流が劣化しないことが報告された。
1A-a03:阿部(KEK)らは、J-PARCのMuSEUM実験に使用する超伝導マグネットの磁場均一度に影響する原因の定量的検討について報告した。鉄片によるシミングによって磁場均一度を調整するが磁場強度が温度により変化した。磁化率の温度依存性だけでは説明できないが、熱収縮によるシム移動なども考慮することで、誤差磁場の温度依存性を説明できることが報告された。
1A-a04:王(KEK)ら、熱的安定性を向上させるために低粘性樹脂のTELENEを使用した加速器用樹脂含侵コイルの開発を行っているため、TELENEに対するガンマ線照射実験について報告された。TELENのみと比熱を上げるためにGd2O3S粉末を混ぜたものは、5MGy以上では曲げ強度が低下することが報告された。


核融合・導体・線材 1A-p01-06 座長 鈴木 研人

1A-p01:村上(QST)
JST60-SAでは2026年の定格運転に向けて、スプレー法を活用した超電導コイルの絶縁補修作業を進めており、作業性の悪い狭小部では高粘度樹脂を用いたスプレー吹き付け法が効果的である旨報告された。
1A-p02:園田(量研機構)
JST60-SAコイルの両端電圧抑制のため回収抵抗値を下げた事による導体最大温度への影響を、数値計算(Gandalf)を用いて調べた報告がなされた。
1A-p03:諏訪(QST)
ITER CSコイルにも使用されているNb3Sn-CIC導体開発に向けて、さまざまなサンプルの繰り返し電磁応力下の歪み特性変化をSULTAN試験装置を用いて評価した。
1A-p04:谷貝(上智大学)
CIC導体の電流分布解析の数値計算アルゴリズムの改良方法について報告があった。
1A-p05:比村(東北大学)
HTS STARS導体の機械的ジョイントを施した際の転流をシミュレーションし、接続条件を変更した際の接続抵抗の定量評価を行った。
1A-p06:伴野(NIMS)
Nb3Sn内部スズ法において、TiとZnの共添加によるJc向上を試みた。その結果、Zn添加による影響で新たな化合物層が生じNb3Sn形成層の促進が妨げられる事がわかった。



12月9日(火)
B会場

HTS 輸送・交流特性 (1) 1B-a01-05 座長 高山 茂貴

1B-a01:下山氏(青学)から、RE123薄膜線材における最適な酸素ドープ量について報告された。特にここでは銀保護層の有無によって空気アニールによる酸素導入の振る舞いに差があることが報告された。
1B-a02:金沢氏(室工大)から、「多岐線」と名付けられた破線状に超伝導薄膜をスリッティングする線材の製造方法について報告された。ローリングカッターの当て方等によって生成されるスリットに差が生じており、そのサイズや長さなどについて報告された。
1B-a03:金沢氏(室工大)から、交流磁場印加時におけるヒステリシス損失を測定する交流損失測定装置について報告された。測定装置は交流磁場を印加する1次コイルと交流磁場の影響を除去する2次コイルとを組み合わせて構成されるもの。
1B-a04:木須氏(九大)から、REBCO長尺線材における局所的なIcの低下が測定上のIcのバラツキに与える影響について報告された。欠陥がローカルに存在しているときに、低い空間解像度でIcを評価した場合、欠陥による影響が見かけ上変化することが紹介された。
1B-a05:山下氏(都立大)から、ハイエントロピー型のREBCO薄膜における照射耐性について報告された。ハイエントロピー型REBCOとはREサイトをYやGd単一ではなく、LaやCe、DyやHoなど複数種類を同量程度組み合わせることで新規の特性を得るもの。ここでは高い臨界磁場を維持しながら、高い放射線耐性が得られた結果について報告された。


HTS 輸送・交流特性 (2) 1B-p01-05 座長 松本 明善

「1B-p01:土屋 雄司(東北大)」らは測定系による発熱抑制のためにパルス電源を用いた測定系の確立を目指した研究を行っている。これまでのDC電源が10A級だったものにたいして100A級まで増大させ、発熱も抑制されていることを示した。
「1B-p02:呉 澤宇(九大)」らはリール式磁気顕微観察によって取得した磁化電流分布の画像に深層学習に基づいた物体検出を導入することで、通常のTapestarによる一次元的Ic測定では検知できていない電流阻害因子を自動的に検出することに成功してきており、磁化電流画像の異なる空間解像度による線材局所不均一性の解析結果を示した。
「1B-p03:佐々 滉太(九大)」らは水平に配列させた線材の交流損失特性についてシミュレーション及び実験を行い、低磁界側での交流損失特性の評価を行った。配列間距離を短くすればモーター等の設計上コンパクトにできる可能性もあるが、交流損失の大きくなる。一方で、長くなればモーター自体が大きくトレードオフの関係にあることを示した。
「1B-p04:大久保 龍一(青学大)」らは銀にディップコートしたBi2223層を積層させ銀で包む、積層厚膜型Bi2223短尺テープの作製を行っており、これまで十分な特性が得られていなかった。これに対して、今回は作製条件等を見直すことによって銀とBi2223の接触面積を増加させ、高い特性が得られるようになったことを報告した。
「1B-p04:山口 作太郎(中部大)」らは半田接合したBi2223とRE123テープ線材の接続部を含め宇ケーブルの短絡電流試験を行った。半田による接合面積を変えても短絡試験には大きな変化がなく、いずれもは相当にも至らず正常に動作することが分かったことを報告した。



12月9日(火)
C会場

産業応用 (1) 1C-a01-04 座長 小田部 荘司

1C-a01 谷貝(上智大)らは急速充電用超電導DCDCコンバータの高昇圧比・大電流化について講演を行なった。入力電力が高く、周波数の高いところで効率95%を得ており、さらに大電流化を進めることにより、超伝導の有利さを際立たせることができそうである。
1C-a02 三品(山梨大)らワイヤレス電力伝送用高Q値LC共振器のための超低損失コンデンサの開発について講演をおこなった。いくつかの実験をおこない、理論値のQ=8533に非常に近い値を得ることができた。これらの実験の結果は理論でよく説明することができる。
1C-a03 東川(九大)らは並列巻線を適用したkA級SMESケーブルの電流分布について検討をした。具体的に周波数に対する8本のストランドの電流分布を測定し、これを抵抗とインダクタンスの測定した行列を使って説明することができることを示し、1.5 kmの長さのケーブルでは平均化されることから電流分流は小さいと説明した。
1C-a04 三島(福井工大)らは福島の自己でセシウムを汚染土壌中からの分離するプロセスの検討について講演を行なった。淘汰管磁気分離を利用することにより、流量を制御して重力の影響を打ち消し、磁気分離の効果を高くする。これにより汚染物質を1/10にすることに成功した。


液体水素環境材料試験 1C-a05-06 座長 谷貝 剛

 グリーンイノベーション基金事業、大規模水素サプライチェーンの構築 液果水素関連機器の研究開発を支える材料評価基盤の整備に関する発表があった。1C-a05, a06連続して2件、小野(NIMS)よりの報告である。この事業により、鋼鉄材料などの構造材料の液化水素を含む低温水素環境下で構造材機械特性が評価できるとのことで、日本では貴重な設備である。当然、危険・消防・高圧ガス・労働基準といった各法律に準拠しており、実験室+制御・計測室として6部屋が準備されている。極低温ガスが真空容器封入できるようになっており、荷重は00kNまで印加できるとのこと。万が一の水素リークでも、非常電源直結の換気扇や、手動の横窓も完備されている。1C-a06では引張試験装置の試験結果が報告され、シールを介した荷重測定では正確な値がわからないため、内部ロードセルを用いている。試験片は3、6本同時測定、疲労試験は1本のみだが、クライオごと交換して試験が可能とのことで、試験の効率的な実施が可能とのことである。温度計測方法について質問があり、間接的なシース温度計のため、サンプル温度の直接測定系を今後考えるとのことである。また大学共同機関としての利用方法は、今後議論していくとのことである。


回転機 (2) 1C-p01-06 座長 小柳 圭

1C-p01:柁川(山理大)らは、電機子の鉄心スロットに配置した多芯金属撚線の損失を解析した。COMSOLのH法での解析結果は理論曲線と良く一致し、周波数によって損失がJoule損失支配から渦電流損失支配になる挙動を確認した。
1C-p02:奥村(東大)らは、回転磁界中の交流損失測定装置の精度向上を図って実験をした。コイルの交流損失に対し機械損失等の発熱が大きかったが周波数依存性から損失を分離した。
1C-p03:寺尾(京大)らは、サブマージドポンプの機械損失低減に向けて超電導磁気軸受の回転試験装置を製作した。スラスト方向の電磁力は以前の3倍に向上、最大1,800 rpmで安定に回転した。ラジアル軸受けの追加も検討している。
1C-p04:中村(京大)らは、高温超電導かご型誘導モータの超高速起動試験を行った。起動時に磁束フロー領域に遷移する自立回転安定性コンセプトによるもので、起動後0.27秒で回転数1,800 rpmに収束し定常同期回転させた。
1C-p05:川﨑(都城高専)らは、REBCO線材による三本並列導体を使った電気子コイルに関し、巻線内転位の適用が電流分布に与える影響を実験的に検証した。ロゴスキーコイルでの測定結果は解析結果と概ね一致し、均一な電流分布が実現された。
1C-p06:大屋(関西学院大)らは、高温超電導発電機の界磁コイル向け集合導体に誘導通電する試験を液体水素冷却下で実施した。4 mm幅REBCO線材3本をスパイラルにした集合導体1ターンの二次コイルに電流約5 kAを通電した。



12月9日(火)
P会場 ポスターセッションI

REBCO 線材・導体 1P-p01-03 座長 元木 貴則

1P-p01: AHMEDら(京都先端科学大)らは、リニア駆動型の永久磁石を組み合わせた変調磁場の印加装置を用いて、エポキシ樹脂中のDy123焼結体配向体の作製について報告した。約1 Tの変調磁場中でのリニア駆動によって、極点測定から鋭い4回対称のピークを示す2軸配向材料が得られている。一方、磁石ガイドの端部付近ではc軸が鉛直方向から傾くことから、できるだけ幅広いガイドの中央部で配向させることが重要である。1P-p02 : 土屋ら(東北大)は、2枚のREBCO線材を安定化Cuを介しFace-to-Back構造でバンドルした導体の転流現象について報告した。意図的に劣化させた線と正常の線をバンドルすることで、通電電流を上げた際に熱暴走が抑制され、劣化箇所の前後で転流していることを実験的に実証した。1P-p03 : 中村ら(Faraday Factory Japan)は、REBCO線材のレーザー加工によるスクライビング細線化とヒステリシス損失や磁場中臨海電流特性について報告した。適切なレーザー出力で25 kW cm程度のフィラメント間抵抗率を達成し、5フィラメントに細線化した線材において、ヒステリシス損失が約1/5に低減したことを報告した。


高エネルギー加速器 (2) 1P-p04 座長 村上 陽之

1P-p04:鈴木(KEK)らは、コイルのクエンチ検出に信号を統計処理したデータを用いる方法の開発を進めている。電圧データを統計処理しF値やT値で現象を追う事で、生データよりクリアにあるいはシャープに変化をつかめる可能性を示唆し、クエンチトリガーシステムへの応用の可能性を示した。また、トレーニング中のメモリ効果も明確に捉えられていること、クエンチトリガーのみではなくクエンチが生じた原因特定にも使用できる可能性についても議論がなされた。


小型冷凍機コンポーネント (1) 1P-p05 座長 仲村 直子

1P-p05 増山 新二
4K冷凍機の希土類を使用しない蓄冷材に関する講演で、蓄冷材を安価に安定調達可能になる利点があるため、性能以外に蓄冷材の成型等の実使用時の課題に関する質問が聴講者から多くなされた。


回転機用高温超電導導体 1P-p06-08 座長 寺尾 悠

回転機用高温超電導導体では、関西学院大学による3件の発表があった。いずれも液体水素冷却を行う高温超電導発電機の界磁コイルへの電流通電を行うため、磁気的に結合した高インダクタンスの一次コイルを励磁して二次コイル(界磁コイル)側へ大電流を誘導する通電方式に関する検討内容であった。特に今回は一次コイルを通電した際に、ロゴスキーコイルでその誘導電流値を測定する方式の基礎検討を行った結果の発表であった。
大淵らは、REBCO線材及びBSCCO線材それぞれ1本を用いて1ターンの短絡二次コイルを製作し、交流誘導通電試験を実施した結果を発表した。
嶋田らは高温超電導線材3本を集合した単層集合導体の誘導通電試験を模擬するため、線材3本を用いた短絡二次コイルを製作し、一次コイルであるREBCOフィールドコイル内に設置して交流誘導通電試験を実施した結果を発表した。
後燈明らは、上記を踏まえて単層集合導体を用いた1ターン短絡コイルの設計・製作を行い、体窒素冷却下で交流誘導通電試験を行った結果を発表した。


回転機 (1) 1P-p09-12 座長 大屋 正義

1P-p09:下村(東大)らは、航空機向け超電導モータの設計解析結果について報告した。回転界磁に冷却が不要な永久磁石、電機子に超電導巻線を適用した同期モータの可能性について検討した結果、バックヨークの外径を小さくするだけでは2MWを達成できなかったが、ロータ外径など形状最適化により達成できる可能性を示した。
1P-p10:大久保(東大)らは、永久磁石を使った交流損失測定結果について報告した。クライオ内にホールセンサーを設置して渦電流の影響を検証した結果、周波数が大きくなると渦電流損失が無視できないことを明らかにした。今後は、渦電流損失の低減方法を検討し、数値解析モデルとの比較も行う。
1P-p11:木村(九大)らは、レーストラック型電機子コイルにおいてREBCO導体の転移が電流分布に及ぼす影響を解析した結果について報告した。界磁の有無に関わらず、対称な転移を施すことで電流分布が均一化する効果が確認された。今後は実験的な検証も進める。
1P-p12:山本(京大)らは、超電導同期モータの超電導ロータバーの角度最適化に関する解析結果について報告した。REBCO線材の角度を最適化することで、二次電流の増加、交流損失の低下、トルクの上昇などの効果がある可能性を示した。今後は、実機による実験結果とシミュレーション結果の比較検討を行う。


産業応用 (2) 1P-p13-16 座長 東川 甲平

1P-p13:清水(九工大)らは、超伝導線材とハルバッハ配列永久磁石を用いた磁気浮上工具の有限要素法による電磁界解析について報告した。通常の工具が届かないところを非接触で操作するコンセプトは興味深く、その際には超伝導体の着磁が必要になるが、本発表では反発力の計算を行っていたので、今後に整合性が担保できることを期待したい。
1P-p14:増田(明治大)らは、極低温下における半導体素子の導通特性について報告した。PNダイオード、ショットキーバリアダイオード、MOSFET、IGBTについて諸特性の温度依存性を得ており、変換器を必要とする超伝導応用のための重要な基礎データが示されていた。質問者が終始訪れ、大変盛況であった。
1P-p15:白石(神戸大)らは、円形流路断面を持つ電磁力型海水・油分離装置の構造と分離実験について報告した。海水に電流と磁場と印加する手法であり、円形流路の内側に不純物を集め、その後段のパイプ形状を工夫することで、効率的な分離が行われるということであった。
1P-p16:渡辺(JSOL)らは、高温超電導応用分野における有限要素電磁界解析の適用性について報告した。最近のJMAGの機能のデモンストレーションという位置づけで、伝統的なA-φ法による無絶縁REBCOコイルの解析が行われていた。並列処理により要素数が数百万にも及ぶ有限要素法解析を迅速に行える様子が示されており、質問者が終始訪れ、大変盛況であった。


12月10日(水)
A会場

超電導・低抵抗接合 2A-a01-06 座長 筑本 知子

2A-a01:加藤志織(青学大)らは、包晶温度がREBCO系の中でも低いYbBCOのFF-MOD中間層を用いて市販YBCO線材間に超伝導接合を形成する条件の検討し、従来よりも低い740℃の熱処理で超伝導接合を確認した。今の所接合Ic値(77K)は3A程度である。
2A-a02:江口朋子(東芝)らは、EuBCO線材について、EuBCO超電導粉末とMOD溶液を混合したスラリーを接続中間層原料として用いて焼成により超伝導接合を形成したものについて、Ic及び接合抵抗特性の評価結果を報告。ループ接続試料による評価で、4K、77K共に10^(-12)Ω以下の接続抵抗を確認。Icは15mm幅ブリッジで96.8A(4K)、約40A(77K)を得た。
2A-a03:武田泰明(物材機構)らは、2A-a02で報告された閉ループ試料について、自己磁場中及び外部磁場印加における電流減衰測定を実施。接続抵抗および臨界電流を定量的に評価し、Icの磁場依存性にヒステリシスが見られること等から、接続層が多結晶であることに由来して、弱結合が顕著であると示唆した。
2A-a04:横山彰一(JASTEC)は、NMR用超電導ジョイントの量産評価を目的とした試験装置において、ループインダクタンスの算定・検証手法について、試験試料を用いて算定方法を提案し、実測による検証を行った結果、算定値と実測値がよく一致することを示した。
2A-a05:世良真也(九大)らは、REBCO線材の音波接合における接合抵抗特性をモデリングし、少数データでも高精度な推定が可能な解析モデルを構築。それを元に、実証を行った結果、同モデルにより、実験条件による接合抵抗特性の推定を可能であることを示した。
2A-a06:田村怜於(東北大)らは、インジウム箔によるラップジョイントを対象に、接合前の処理や保管温度が接合抵抗に与える影響を評価。300Kでの長期保管時に、接合界面において、CuIn2が成長し、界面抵抗の上昇が見られることを報告した。一方、77Kではその影響はほとんど見られなかった。


安定性・コイル保護 2A-a07-10 座長 王 旭東✕

「2A-a07:秦(東北大)」オーバーシュート電流による遮蔽電流磁場変動抑制効果を評価する簡易解析方法について報告された。小口径のダブルパンケーキコイルの実験結果と比較検討して定性的な一致が得られたが、減衰変化などに対する定量的な誤差はある。質疑応答では、オーバーシュート電流60Aと90Aで遮蔽電流による影響が0をクロスして負になるのはどのような物理的な現象となるのか。オーバーシュート電流の大きさによって減磁中に最初の遮蔽電流の外側に逆方向の遮蔽電流が生じる。また0の状態は逆方向の遮蔽電流が同時に存在する可能性があるという回答であった。
「2A-a08:小柳(東芝エネルギーシステムズ)」RE系線材の非含浸パンケーキコイルの試作と検証試験の結果について報告された。コイル端面の熱可塑性樹脂を100-120℃で接着してターン間に樹脂を浸透させないコイル構造を報告された。解析から冷却によって熱可塑性樹脂が径方向に最大190MPaのミーゼス応力を受ける。熱サイクル後の樹脂の熱抵抗へ変化なく、コイルIc劣化もない。質疑では、熱可塑性樹脂とコイルの接着は圧縮して行われたかについて、ストッパーで厚み管理して行われた。コイルの積層も熱可塑性樹脂が使われたのか、また分解可能という目標は達成可能かについて、積層はエポキシ樹脂を使用して、分解は積層前のシングルパンケーキコイルで可能ということであった。
「2A-a09:今川(NIFS)」REBCO線材による3ターンコイルの液体水素と液体窒素での熱暴走試験について報告された。1.5mの線材中央の0.1 mの範囲を劣化させて銅テープと共巻きでGFRP巻枠の溝に3回巻線し、ターン間はカプトン絶縁して、溝の隙間を絶縁紙と樹脂で埋めた構造である。熱暴走試験は、コイル上面を冷媒に接触させて行い、熱暴走しやすくするために半分の接触面をエポキシ樹脂で蓋をした。液体水素20K、25K、27K(圧力変えて調整)で測定した熱暴走は限界熱流束に依存すると予想したが、熱流束が下がると思われる27Kの結果は他より高い電流まで熱暴走しなかった。線材表面の気泡発生状況の違いによる影響が言及された。



12月10日(水)
B会場

HTS 電気機械特性 2B-a01-05 座長 岡田 達典

「2B-a01:久米(東北大)」
 フジクラ製4mm幅EuBCO線材を対象とし,冷却能力(ガスフロークライオスタット)が小さくなる50-77.3 Kの温度域におけるIcのひずみ依存性を,1,200 Aまでのパルス電流を用いて調べた結果が報告された.現時点では自己磁場下における測定のみのため,今後より低温かつ磁場中での系統的なデータ取得が望まれる.特に磁場中においては,直流法とパルス法ではLorentz力によるひずみ速度が異なるため,両手法の定量比較が必要となるであろう.
「2B-a02:長村(応科研)」
 SuperPower製REBCO線材を対象とし、一軸伸長ひずみと捻りひずみを重畳した場合の機械特性評価について報告された.応力-ひずみ曲線に対する捻りひずみ印加の影響を,一軸伸長ひずみのみの場合の応力-ひずみ曲線からの並行移動と単純化したモデルによって,観測されたIc-ひずみ特性で観られる弾塑性的な挙動を定性的には理解できることが報告された.今後,定量的な議論が望まれる.
「2B-a03:寺西(九大)」
ナノインデンテーションによるGdBCO薄膜/STO基板の局所強度測定について報告された。GdBCO膜厚が薄い(~300 nm)場合、下地であるSTO基板の機械特性が現れる。固定方法などの課題を改善すれば,市販のREBCO線材にも適用できるとのことで,他の機械特性評価との比較・対応付けなど期待したい.
「2B-a04:町屋(大同大)」
 ハサミで剪断したSuperPower製のREBCO線材を対象に,剪断断面のSEM観察を行ない,剪断に伴う45°方向に成長するクラックが0.5 μm程度の間隔で存在することが観測された.他メーカーの線材との比較(特に,面内配向が45°異なるフジクラ製の線材でも定量的に同じ結果となるのか)や剪断起因のクラックの統計など,今後の更なる評価が望まれる。
「2B-a05:羅(東北大)」
4.2 KにおけるIc特性の向上が報告されたSUS/AgシースBa1-xKxFe2As2テープ線材に対する,中温域(10-25 K)におけるパルスIc特性が報告された。従来のシース材料で観られていたIcの磁場ヒステリシスが殆ど消失しており,粒界ピンニング特性の向上が示唆された.今回の温度域でのIcは直流測定でも十分アクセス可能な電流値であることから,通電時における局所発熱の影響などの定量比較も期待したい.


ピンニング 2B-a06-10 座長 土屋 雄司

2B-a06:松本(名大)らは、2次元TDGL数値解析により従来より高密度のナノロッドおよびランダムピンニングを導入したRE123薄膜において、磁束ピン力密度4 TN/m3が予測されるとした。この値は従来の材料で得られた値の2倍程度であり、今後の実験での実現が望まれる。2B-a07:相楽(青学大)らは、Clと、ZrまたはHfを添加したFF-MOD法により作製したY123薄膜のピンニング特性について報告した。Y211やY2O3の添加も試みたが、HfまたはZrの添加が効果的であるとした。2B-a08:石井(都立大)らは、F-MOD法を用いたGd123薄膜へのGd214ピンニング中心の導入について報告した。TEM像から123母相内に1ユニット層、20ユニット幅の214層が成長するとした。今後、結晶成長過程や磁束ピンニングの磁場印加角度依存性の測定が望まれる。2B-a09:中島(成蹊大)らは、TFA-MOD法を用いて作製したY123薄膜へのCa添加によるJcの変化について報告した。Ca添加によりY123のままでは得られない高濃度ホールドープが可能であるとし、77 Kおよび低温において、対破壊電流密度Jdの増大に伴いJcが向上するとした。2B-10:岡田(九工大)は、Ba122テープにおいて生じるJcの磁場ヒステリシスの異方性モデル化について報告した。従来の低傾角粒界におけるAbrikosov-Josephson渦糸のピンニングモデルに加えて、異方性や粒界の向きの効果を考慮することで、ヒステリシス曲線の異方性を説明可能であるとした。



12月10日(水)
C会場

計測・物性 2C-a01-05 座長 岩本 晃史

2C-a01:野末(アルバック・クライオ)「量子コンピュータ用大型希釈冷凍機の開発」では国産初となる量子コンピュータ用希釈冷凍機の開発について報告があった。最低到達温度13.1mKを実現し、大阪大学に設置した。2C-a02:神田(中部大)「短絡電流試験時のひずみゲージ測定」では、シリコンp型半導体ひずみゲージと金属箔ひずみゲージを使った超伝導テープ線のひずみ測定について報告があった。両ゲージによる測定結果が一致しない原因究明を行っている。2C-a03:河江(九大工)「超伝導体内部に侵入した水素が引き起こす量子現象」では超伝導体内に侵入した水素の量子的な振る舞いに関する実験研究について報告があった。超伝導状態では金属内水素のトンネル拡散が劇的に増加することが理論的に示されている。磁場中に置いた水素吸蔵超伝導線に交流電流を流し、共振周波数の変化から水素の拡散に伴う内部摩擦の変化を評価した。水素吸蔵超伝導線の内部摩擦増大の可能性があることがわかった。2C-a04:秋澤(東大)「高純度銅線を用いた低温・低発熱ステッピングモーターの11K以下における発熱特性」では低発熱モーターとして高純度銅線コイルとガラスエポキシシャーシを用いたステッピングモーターを作成し、その発熱について11K以下の評価結果の報告があった。2.25rpm以下では10mW以下を達成した。2C-a05:白石(岡山大)「液体窒素温度における磁気シールド用軟磁性材料の磁気特性評価」では超伝導コイルを用いたEV急速充電用非接触給電システムのための磁気シールドとして使う軟磁性材料の磁気特性評価について報告があった。ナノ結晶軟磁性材料やアモルファス合金、パーマロイなどの鉄損を常温と液体窒素温度で測定した。


熱伝達・冷却システム (1) 2C-a06-10 座長 増山 新二

2C-a06:高畑(NIFS)は、液体窒素中における樹脂コーティング伝熱面のライデンフロスト温度の測定を行った。実験値と計算値がよい一致を示したことから、膜沸騰状態で気泡が離脱したときに、瞬間的に液体が伝熱面に接触する現象(ILSC)が関与していると報告した。
2C-a07:結城(山口東理大)らは、液体窒素沸騰冷却におけるT型特殊フィンの構造の検討を行った。窒素沸騰後の膜沸騰を抑制し、窒素温度までの戻り時間を短くすることを狙っており、T型フィンの空隙部深さ、ならびにT型フィンを2段構造にしたときの冷却効果を報告した。
2C-a08:岡島(神戸大)らは、報告事例の少ない蒸発水素ガスにおけるパラ・オルト変換について、その反応速度に及ぼす貯蔵圧力と温度の影響についての実験結果を報告した。1年を超えるような長い月日が必要な実験もあり、データ収集が大変であると思われるが、今後のさらなるデータ積み重ねに期待したい。
2C-a09:高田(NIFS)らは、液体水素タンクにおける真空断熱層劣化時の模擬実験の結果を報告した。Oリングを用いたシールオフバルブによって封じられた真空断熱層の経年劣化の寿命を予測しようとする試みである。液体水素の一定のリークレートに対し、真空度が一定に上昇しない現象が観測されており、原因究明が期待される。
2C-a10:渡邉(中部大)らは、多層断熱材の巻き方の違いによる熱浸入量の測定結果を報告した。巻き付け対象物(表面温度25~50℃)に対して強く巻き過ぎない方が、熱損失が小さくなることを数値データで示した。断熱層の巻き方、厚さなど、実験パラメータが多いと思われるので、今後のさらなるデータ積み重ねに期待したい。



12月11日(木)
A会場

無絶縁REBCO コイル1 3A-a01-04 座長 曽我部 友輔

「無絶縁REBCOコイル」のセッションでは、4件の発表があった。「3A-a01: 櫻井(東北大)」では、スマート絶縁コイルに用いる金属-絶縁体相転移材料の作成手法について報告され、従来から作成方法を改善し、特性が向上したという報告がなされた。質疑では相転移があまりシャープにみられないことについての質問や今後の方針についての議論が行われた。「3A-a02: 今西(上智大)」では、ステンレス鋼で編まれたメッシュを用いた抵抗制御界面を実装したNIコイルの熱伝導特性についての報告があった。メッシュの仕様や電気抵抗との関係などに関する質疑があった。「3A-a03: 阿部(東芝ESS)」では、導電性樹脂で含侵したHTSコイルを伝導冷却したときの特性試験についての報告があった。オーバーカレント条件での熱暴走を発生させた場合の保護性に関する検討を行い、おおむね理論通りの保護の成否の結果が得られているということであった。「3A-a04: 間藤(北大)」では、積層パンケーキコイルに非通電のダミーコイルを配置することによる遮蔽電流低減効果に関する検討が報告された。質疑では、コイル励磁時にダミーコイルに電流が誘導されることは無いのかといった議論がなされた。


SCSC ケーブル (1) 3A-p01-04 座長 横山 彰一

3A-p01 雨宮(京大)は東芝ESS、古河電工、SuperPower Inc.との共同研究で、SCSCケーブルの研究開発の進捗(2025年春)(1):概要と題しこれまで実施しているSCSCケーブルの研究開発の実施状況について今回までの進捗を述べ、SCSCケーブルの機械特性や交流損失について得られた成果についてまとめた。
3A-p02 引き続き、雨宮(京大)はSCSCケーブルの研究開発の進捗(2025年春)(2):新概念SCSC-IFBケーブルと初期実験結果と題し、電流を迂回させるためにフィラメント間に超伝導ブリッジを設けた線で構成したSCSC-IFGケーブルについてその効果やブリッジ間隔を変えることでI-V特性が改善される様子などを報告。会場からIFGケーブルのブリッジの構造等について質疑がなされた。
3A-p03 曽我部(京大)は、SCSCケーブルの研究開発の進捗(2025年春)(3):SCSC-IFBケーブルの磁化損失解析と題し、上記で紹介されたIFBケーブルの交流損失の解析と実験結果について報告がなされ、ブリッジの間隔が広くなることで交流(磁化)損失が低下し、14mm以上ではほぼ飽和し、磁場角度によって増加することが報告された。
3A-p04 坂本(東芝ESS)はKEK、新潟大、京大との共研で、SCSCケーブルの研究開発の進捗(2025年春)(4):コイル化にむけた要素試験用短尺ケーブルの機械特性評価と題し報告。SCSCケーブルの短尺線の両端に銅パイプをはんだ付けし、引張試験を実施。150Nで引っ張った結果Ic低下した。Ic低下部位を測定したところパイプ付近で劣化しており低剛性のIn合金はんだによる影響と考え、剛性の高いSn合金はんだで実施した結果、改善できた。質疑では、引張試験では端部に応力集中するのを避ける形状にすべき、高剛性はんだを使う方が端部での応力が集中し劣化しやすいのではとのコメントが寄せられ、引き続き評価を実施するとのことであった。


SCSC ケーブル (2) 3A-p05-09 座長 淡路 智

 一つ前のセッションに引き続き、京都大学で開発しているSCSCケーブルに関連する5件の発表があった。3A-p05:重政ら(京大)は、SCSCケーブルのヒステリシス損失について従来のn値モデルの他、臨界状態モデル(臨界電流が電界に依存しない)で計算した結果と、実験結果との比較を行った。結果としてn値モデルを用いた場合には、電界により臨界状態モデルよりも高いJcとなる場合があり実験との誤差が生じる。電磁界解析によって計算した結果、試料内部の平均臨界電流密度は、臨界状態モデルよりも大きくなることが分かった。3A-p06:上垣ら(京大)は多層SCSCケーブルにおける結合損失の温度依存性について報告した。結果として想定される数100Hz以下では結合時定数が十分短く、結合損失の影響は小さいと結論づけた。3A-p07:曽我部ら(京大)はSCSCケーブルで作製したマグネットの磁場精度について、フィラメント化したREBCOテープを複数層スパイラル状に巻き付けた構造を持つSCSCケーブルに対して、電流ベクトルポテンシャルを未知数とするT法と超伝導層に流れる電流のみを考慮する方法2種で計算を行った。その結果、少なくとも中心から14 mm以下では加速マグネットで必要な精度が確保できることが分かった。3A-p08:福井ら(新潟大)はSCSCケーブルを用いた航空機用回転機について、SCSCケーブルを電機子巻線に用いた4極ハルバッハ界磁機と善高温超伝導機の電磁設計について比較した結果を報告した。3MW機の計算の結果前者が後者の2倍以上の重量となったが、どちらが良いかは沙羅何詳細な検討が必要とのことであった。3A-p09:許ら(京都大)は、2層SCSCスパイラル導体の層間電流分布について、ホール素子を用いた測定方法について報告した。Icよりも十分低い電流では、電流の片方から他方への層間乗り移りが一定の割合で起こる結果となったが、負荷率を上げた場合に関しては更なる実験が必要とのことである。また、ホール素子による測定精度にもよるが電流成分の評価などへの拡張も考えられるのではとの議論があった。



12月11日(木)
B会場

バルク作製 (1) 3B-a01-05 座長 山本 明保

3日目午前のバルク作製(I)セッションでは5件の講演発表があった。質疑では学生、若手の積極的な挙手もみられた。
3B-a01:芦生(岩手大)らは、SmBCOシードプレートを用いたSDMG法によるAg添加GdBCOバルクの育成と超伝導特性について報告した。GdBCOバッファーペレットを導入することにより、効果的にAgの拡散とSmBCOシードの溶融を抑制できることを報告した。
3B-a02:國本(青学大)らは、SDMG法による希薄不純物ドープREBCOバルクの 育成と捕捉磁場特性について報告した。Zn及びGaを1mol%程度希薄ドープすることにより、転移温度はわずかに低下するが、中低温域ではノンドープを大きく上回る捕捉磁場を得た。
3B-a03:箱石(岩手大)らは、一方向溶融成長法によるAg添加YBCO超伝導体バルク作製におけるバッファーペレットの効果について報告した。SDMG法におけるバッファペレットの効果について、Agの拡散、溶融、結晶成長の観点から総合的に議論した。
3B-a04:元木(青学大)らは、サイズや希土類の異なるSDMG法REBCOバルクの中低温捕捉磁場特性について報告した。捕捉磁場の温度依存性からフル着磁温度を見積もり、YBCO, DyBCO, GdBCOの中低温域での捕捉磁場の異なる挙動について報告した。
3B-a05:遠藤(青学大)らは、SDMG法によるマルチシードを用いた大型REBCOバルクの 育成と捕捉磁場特性について報告した。複数枚の種基板を用いたマルチシードにより比較的大きなサイズのYBCO溶融凝固バルクを結晶成長することに成功した。結晶粒界面の影響を観測したほか、捕捉磁場分布特性を報告した。


REBCO 薄膜 3B-p01-03 座長 内藤 智之

 本セッションでは3件の発表があり,2件はREBCO薄膜,1件はLSCO薄膜に関する発表であった。
「3B-p01:畠(青学大)」
 FF-MOD法で作製されたREBCO薄膜(RE=Nd, Sm, Eu)の超伝導特性についての報告であった。REとBaの固溶については還元雰囲気下で作製される薄膜では大きな問題にならないとの予想であったが,as-depositedサンプルはブロードな転移を示しRE/Ba固溶が生じていることが示唆された。ただし,酸素中のポストアニールによるキャリア制御により転移はシャープになり臨界電流密度も向上することが示された。
「3B-p02:梶(成蹊大)」
 TFA-MOD法で作製されたLSCO薄膜の超伝導特性に対するSr置換量の影響についての報告であった。Sr置換量が0.2のときに臨界電流密度Jcが最大になるとのことであったが,そのJcが単結晶に比べて1桁程度低いことから作製条件に関して議論があった。今後は,著者らのグループで提案している新材料設計指針に沿って超伝導特性の向上を目指すとのことであった。
「3B-p03:藤本(九大)」
 著者らのグループはYBCO薄膜線材の交流損失を低減させるマルチフィラメント化の方法としてZr細線を基板上に配置することを提案している。今回はSrTiO3基板上にTFA-MOD法で作製したYBCO薄膜の通電特性についての報告であった。Zr有りのYBCO薄膜の臨界電流およびn値はZr無しに比べて低くなっており,これはZr上のランダム配向したYBCO薄膜に起因するとのことであった。


バルク作製 (2)・着磁特性 (2) 3B-p04-09 座長 原田 直幸

3B-p04覚前(岩手大)からは、SUS製カプセル容器を用いた簡便なMg気相輸送法によりMgB2バルクを作製し、premix法を用いて800℃で70時間の熱処理を行った試料において、10Kで2.61T、20Kで1.90Tの磁場を捕捉したことが報告された。
3B-p05杣澤(岩手大)からは、コンタミの影響が生じない超音波照射でBを微細化し、浸透法で作製したMgB2バルクの捕捉磁場特性や微細組織観察が示され、30分間超音波照射した試料では20Kにおいて約2Tの捕捉磁場が得られ、ボールミルバルクに近い値であることが報告された。
3B-p06霜山(東京農工大)からは、トポタクティック反応を用いて、Sm1111多結晶に対する水素ドープ手法について報告が行われ、乳鉢混合によって水素ドープを検討した試料では格子定数の変化は非常に小さいが、高エネルギー混合によって水素ドープを検討した試料では格子定数の変化がみられた。
3B-p07水登(東京農工大)からは、従来よりも高いエネルギーで混合を行った前駆体粉末を用いて、放電プラズマ焼結によりKドープBa122多結晶バルクを作製した結果、不純物のFeピーク強度比が減少し、Ba122のメカノケミカル合成が促進され、磁場中のJcの向上がみられたことが報告された。
3B-p08岡(芝浦工大)からは、単一磁極の中央部にパルス着磁で意図的に凹型の磁場分布を形成し、磁極上3mmで半径方向に6mmの区間で834ppm以下、10mmの区間で2,839ppm以下の平坦な領域が得られ、検出コイルや評価試料の形状によってはNMR機器として利用できることが示された。
3B-p09横山(足利大)からは、効率的に着磁する方法として、初めに弱い磁場を印加して特性の低い部分をわずかに発熱させ、その後2回目の磁場印加で磁束を侵入させるFAVS法について実験結果が示され,1回目の印加磁場が小さい場合にシングルパルス場合よりも総磁束量が大きくなることが報告された。


12月11日(木)
C会場

冷却システム (2) 3C-a01-05 座長 山田 智弘

本セッションでは様々な対象物に関する冷却システムの報告があった。「3C-a01:高木(東芝ESS)」では、伝導冷却超電導磁石のModelicaを用いた冷却設計をガス冷却方式に発展させた研究報告があった。搭載しているGM-JT冷凍機や他の冷凍機をうまく組み合わせた効率的な冷却方法を解析と実験の双方から検証し、その結果はよく一致していた。「3C-a02:飯田(株式会社たすく)」では、月の昼夜の激しい温度差により月震を観測する観測装置が故障するのを防ぐために、観測モジュール内をヒーターを用いて温度コントロールするために必要なヒーター電力の計算結果について報告があった。「3C-a03:岩本(阪大レーザー研)」では、高速点火方式レーザー核融合のための重水素ターゲット冷却装置の開発状況について報告があった。熱伝導体の断面積が十分ではなく水素ガスの液化にはまだ成功していないということであったが、熱伝導体を改良し今後の学会での液化達成報告が望まれる。「3C-a04:仲村(核融合研)」では、高温超電導コイルの冷却にはヘリウムだけではなく様々な冷媒を用いることができることから、ヘリウムと水素を冷却に使用した場合の解析結果の報告があった。「3C-a05:Wang(同済大)」では、液体水素充填ステーションのゼロボイルオフ研究について、熱侵入の抑制や液体水素ポンプ、再凝縮システムなどの検討結果について報告があった。


小型冷凍機 3C-p01-05 座長 斎藤 明子

小型冷凍機セッションでは、JT冷凍機、パルスチューブ冷凍機、磁気冷凍技術に関する5件の発表があった。「3C-p01:李(同済大学)」臨界点付近のHe特有の熱力学的特性を利用したJTバルブレスの4K-JT 冷凍機を試作し基本動作を検証した。3段目の高圧損熱交換器の毛細管設計が重要であり、構造・材質の最適化について質疑がなされた。「3C-p02:西尾(アルバック)」Sageを用いたパルスチューブ冷凍機のシミュレーションと実機試験との比較を行い、冷凍性能は1段/2段目ともに高精度な一致が得られたことが報告された。PV仕事評価には極低温での冷媒(He)の圧力、温度、流量の実測が肝となり、特に往復流の流量測定を可能にした独自開発の梁型流量計に注目が集まった。「3C-p03:ZHANG(同済大学)」共用イナータンスチューブを用いたスターリング型パルス管冷凍機で位相シフトバッファが冷凍性能に大きく影響することが報告された。磁気冷凍技術については要素試験の発表;「3C-p04:小林(NIMS)」新規ErCo2系材料を用いた磁気冷凍試験開始、「3C-p05:脇(鉄道総研)」スイッチングによる励・消磁サイクル形成の予備検討が報告された。


MgB2 3C-p06-09 座長 木内 勝

3C-p06:野尻(青学大)らは、CドープしたB過剰前駆体粉末を用いて様々な焼成条件で部分拡散法によるMgB2バルクを作製し、特性評価を行った。Bに対してCを2%ドープしたB過剰前駆体粉末を用いたバルクは、15 Kで高Jcを示した。更に、700℃:24hの低温長時間焼成を加えると、高磁界でも高Jcが得られることを報告した。
3C-p07: 那須川(青学大)らは、低温前熱処理過程を追加したPremix拡散法を用いて大きさの異なる2種類のB粉末及びTiB2を添加したMgB2バルクを作製し、その特性評価を行った。フルウチ社製の粒径~1µmと微細粒径~0.1µmのBを用いて700℃:48h前熱処理の後、850℃:9h焼成で、TiB2を数%添加することにより高Jcが得られることを示した。ただし、熱処理とTiB2の添加量のバランスで、Jcが大きく変化することも示した。
3C-p08:田中(日立)らは、熱処理時間が異なる鉄シースMgB2線材の応力ひずみ特性について調べた。熱処理時間を12時間~96時間と変化させた線材の応力ひずみ曲線に注目し、12時間熱処理の鉄シースの実験から求めた降伏点が推定で求めた点よりも高くなることを示した。この原因は、推定では熱処理による鉄シースの結晶粒界の変化を考慮していないためで、この影響を考慮すると実験値と推定値でよい一致が得られること報告した。
3B-p09:中川(神戸大)らは、MgB2線材を用いた液体水素用液面センサーの高精度化のために、引張応力とMgB2の添加が臨界温度Tcへどのように影響を与えるのかを調べた。引張応力が大きくなるとTcは減少し、遷移幅ΔTcは広がり、さらにSiCを添加するTcが減少することを報告した。


12月11日(木)
P会場 ポスターセッションIII

HTS 輸送特性・解析 3P-p01-04 座長 金沢 新哲

P-p01 希土類系超電導線材を複数枚積層した超電導複合導体の電流輸送特性評価
宇都宮 銀汰, 安部 信吾, 高橋 正希, 田代 理一郎, 井上 昌睦 (福岡工大)
 希土類系超電導線材を2枚または4枚積層した複合導体について、電流電圧特性の実験評価を行った。線材間の電流ルートが複雑であり、基板側を向かい合わせた場合と、超電導層側を向かい合わせた場合の臨界電流の違いが現れている。またキンク特性の有無について評価し、その理由についても解析をしている。
3P-p02 超電導複合導体の広範な電界範囲にわたる通電測定と臨界電流の統計分布解析
山口 優斗, 宇都宮 銀汰, 田代 理一郎 (福岡工大); 中村 武恒 (京大); 井上 昌睦 (福岡工大)
 Bi2223線材を複数枚積層させた複合導体の電流電圧特性について実験評価を行った。線材間の半田付けで6枚重ね、広範な電界範囲での通電測定と臨界電流の解析・評価を実施した。実験では多くのサンプルを測定し、臨界電流の電界基準依存性と統計分布解析をした結果を発表した。
3P-p03 TFA-MOD法により作製した人工ピンニングセンター導入型REBCO線材の磁場中臨界電流特性
高城 凜, 隠崎 遼河, 関戸 真矢, 田代 理一朗 (福岡工大); 小山田 拓真, 佐藤 迪夫, 塩原 敬 (SWCC); 土屋 雄司, 淡路 智 (東北大); 井上 昌睦 (福岡工大)
 TFA-MOD法により作製した人工ピン入りREBCO線材について、BaとREの比が異なる3種の線材(比が1.5と1.8とそれらの混合)について評価した。評価では、磁場中で臨界電流を測定し、臨界電流の磁場確度依存性を報告した。臨界電流の磁場依存性では、異なる振る舞いを示した。その理由の一つは、不純物と関連あると報告している。
3P-p04 高温超電導複合導体の電流導入部の電圧発生に関する有限要素解析
田代 理一郎, 安部 信吾, 宇都宮 銀汰, 髙橋 正希, 井上 昌睦 (福岡工大)
 REBCO線材の複合導体について、電流導入部の電圧をシミュレーションした。」有限要素法を用いて、銅板端部からの距離による電流―電場特性を求め、臨界電流附近の電流下における各ポジションの発熱を計算した。なお、電流・電圧分布についても報告した。


HTS 交流損失・構造 3P-p05-08 座長 柁川 一弘

3P-p05:新藤(鹿児島大)らは、交流損失の測定法の1つであるピックアップコイル法について、磁化検出コイルに含まれる誘導成分を補償コイルで取り除く際の測定感度向上を目指して、7つの励磁コイル群の間隔を微調整することにより両コイルに印加される磁界分布の対称性を改善した。3P-p06:濱田(鹿児島大)らは、パワーエレクトロニクス機器でBi-2223サンプルコイルを励磁した際の台形波に重畳された高周波成分によるヒステリシス損失の増加要因について、擬似低周波における磁束クリープの影響を取り除くことで、その定量的な説明を可能にした。3P-p07:伊藤(東京農工大)らは、SPS法で作製された鉄系高温超伝導材料Ba122のSEM像を取得し、それを多数枚の画像データに増幅した各々をクラックの有無でラベリングして深層学習アルゴリズムの1種であるCNNを用いて学習させ、その画像識別を約97%の高精度で実現した。3P-p08:白木原(大同大)らは、BSCCO超伝導フィラメントの破壊挙動を観察するために、市販のBSCCO多芯テープ線材の銀シースを剥がした試験片を接着した梁に4点曲げの荷重で引張負荷を印加した際の応力集中やクラック発生の様子を可視化した。


小型冷凍機コンポーネント (2) 3P-p09 座長 仲村 直子

3P-p09 小田 靖久
真空中で使用する熱スイッチに関する講演で、薄い銅板を安価で簡単に組み立てられるフィン構造の紹介があった。聴講者からは、具体的な加工方法や組み立て方法に関する質問が多数あった。


水素資源 3P-p10 座長 渡邊 裕文

3P-p10:小田(摂南大)らは集光太陽熱により木材、サトウキビなどのバイオマス資源を熱分解し、得られた熱分解ガス中の水素ガスの抽出を目的に液体窒素を用いた深冷分離を行い、分離ガスの成分分析を行った。深冷分離前後で水素含有量の増加が確認されたが、他のガス成分もかなり残留していた。これは熱分解ガスが十分に冷却されていない可能性があるとし、今後、熱分解ガスの温度計測を行い冷却状況の確認を行うとのことである。


HTS マグネット 3P-p11-13 座長 藤田 真司

3P-p11:鈴木(KEK)らは、REBCO線材で製作された鞍型2極コイルの誤差磁場を評価するため、GFRP管に多数のホール素子を取り付けた測定プローブについて報告した。従来の回転型プローブに比べて高サンプリングレートでの測定が可能となるとのことであった。
3P-p12:武居(北大)らは、REBCOパンケーキコイルが密巻きの場合とSUSテープを共巻きした場合について、遮蔽電流分布や電磁力分布の解析結果を報告した。運転温度は50 Kとし、中心磁場が同じとなる条件で比較した場合、共巻きコイルの方が通電電流が大きくなるため遮蔽電流が大きくなる結果であった。
3P-p13:野島(東北大)らは、現在開発している無冷媒33TマグネットのREBCOインサートコイルの電磁力による変形の解析結果を報告した。解析では遮蔽電流と磁場の相互作用によるテープの変形も考慮されている。①非含浸の場合と、②完全に樹脂含浸した場合と、③非含浸巻線後にコイル上下面にGFRP板を貼り付けた場合を比較し、最大歪は①>③>②の順となった。


着磁特性 (1) 3P-p14-15 座長 岡 徹雄

当該セッションには以下の2件のポスター発表があった。
3P-p14 于 澄
発表内容は、テープ線材をシート状に切断加工して、これを積層してバルク磁石のように、磁場を捕捉して、磁場発生機として使う提案。さらに、リング状に成形したフィルム上の基板を数百枚積層してソレノイドとし、これに磁場を捕捉するために、FC着磁を9Tの超電導磁石で行った。温度は4Kである。磁場捕捉が温度上昇なく行われ、捕捉磁場を保持するとともに、その変化率を評価した。
来訪者の議論内容は、バルク磁石とは異なり、テープ積層したソレノイドの内部を使う以上は、印加した9Tの磁場のまま捕捉されることを示した。
3P-p15 原田 直幸
発表内容は、12mmのテープ線材から切り抜き加工したリング状とスリット付きテープを使い、これらを77Kで、永久磁石による励磁を行ったそのリング内の磁場性能を評価したもの。
来訪者の質疑内容は、液体窒素での実施で磁石の取扱いによる箔の保持方法について、リングシートを多数積層した場合の磁場捕捉の予想についてであった。