5T-φ300mm無冷媒超電導マグネットの開発

神鋼・電子技術研究所:○渋谷和幸、伊藤 聡、尾崎 修、枩倉功和 林 征治、嶋田雅生、川手剛雄
ジャパンマグネットテクノロジー:高畠和夫


1.はじめに
 直径300mmの大口径室温空間に5テスラを発生することのできる無冷媒超電導マグネットを開発した。マグネットの設計には実測によるIc-B-T曲線を用いて最適設計に努めた。また、2段式4K冷凍機の1stステージと2ndステージ間にNeガスを作用媒体とする熱スイッチ1)を搭載し、初期冷却時間の短縮を実現した。

2.実験
 設計に必要なマルチフィラメントNbTi線材のIc-B-T曲線の実測は、別途製作した無冷媒Ic測定系を用いた。300A/分の電流スイープに対して5K以上で0.1K以下の温度上昇を実現している。Icのクライテリアは1mV/cmを採用した。これをもとに設計、製作された5T-φ300無冷媒マグネットは、初期冷却試験、励磁試験、強制クエンチ試験(冷凍機停止による自然昇温クエンチ)などを行った後、冷却状態にて出荷(コールドシップ)された。に開発したマグネットの諸元を示す。

3.結果
 図に外径0.65mmのNbTi線の3T〜5TのもとでのIcの温度依存性の実測結果を、次の実験式による計算値(実線)とともに示す。ここでTc(0T)=9.2K、Hc(0K)=14.5Tとする。ただしに示される通り、実測値と計算結果はかなり良い一致を示しており、多少の補正を加えればNbTiマグネットの設計に十分利用可能であることが確認された。また、初期冷却時間はNeガスを作用媒体とする熱スイッチが良好に作動し、冷却重量約160kgに対して、室温より励磁可能となるまで約65時間であった。


   表 マグネットの主な諸元     
室温ボア内径 301mm
最大中心磁界 5.00T
最大経験磁界 5.84T
磁場均一度(φ100mm,高さ10mm円筒内) 2%以下
運転電流 81.66A/5T
蓄積エネルギー(5T発生時)  0.52MJ
4K冷凍機所要電力(定常時) 6.5kW(50Hz)


図 3T、4T、5TでのIc-T曲線の実測と計算比較

<参考文献>
1)K. Shibutani et al.:Advances in Cryogenic Engineering 42(印刷中)
2)M. S. Lubell:IEEE Trans. Mag.19(1983)754