Bi-2212多層テープを用いて作製したコイルの特性試験

金材技研   熊倉浩明、北口 仁、戸叶一正
昭和電線   長谷川隆代、引地康雄 


【はじめに】 Bi-2212線材は、低温では高磁界においても高いJcが得られることから、高磁界NMRマグネットなどに有望と考えられる。また数テスラの磁界においては、20K前後の温度においても高いJcが得られることから、冷凍機冷却型のマグネットとしても期待が持たれる。そこで本研究では、Bi-2212小コイルを作製し、NMRマグネットで必要とされる永久電流モードでの運転の可能性を検討するために高磁界においてE-J 特性を精密に測定した。また、冷凍機冷却を用いて種々の温度において励磁試験を行い、コイルの安定性について調べた。

【実験】 Bi-2212多層テープを塗布法により作製し、これを用いて大小二つのBi-2212コイルを製造した。外径45mm、内径35mmの小コイルを高磁界超伝導マグネット内にセットし、4.2K、種々の磁界中でE-J曲線を測定した。また、外径128mm、内径60mmのダブルパンケーキコイルをGM冷凍機に設置して励磁試験を行った。8-70Kの温度範囲で冷却ステージの温度を一定とし、一定の電流を流してコイルの温度ならびに電圧の時間変化を測定した。電流リードには銀テープを用いた。

【結果】 図1に、種々の磁界で測定したE-J曲線を示す。測定した電界の範囲では、logE-logJはすべての磁界においてほぼ直線で表される。直線の傾きnは、ゼロバイアス磁界で〜17であり、磁界とともに減少していくが、10T以上ではほぼ一定となり、その値は〜11であった。n値は永久電流モードでの運転電流の大きさを左右するパラメータであるが、logE-logJの直線関係がさらに低い電界まで成り立つと仮定し、標準的なコイルのインダクタンスを用いて計算したところ、高磁界においては運転電流を臨界電流の約30%にまで低下させると、発生磁界の減衰をNMRマグネットに必要とされる0.01ppm/hr以下にすることができる。

 一方、冷凍機を用いた試験においては、20Kにおいて安定に運転できる最大電流は95Aであった。また発熱はほとんどが電流リードから起こり、その値は〜0.6Wであった。種々の温度で試験した結果を図2に示す。図においては、本測定で得られたコイルを安定に長時間運転できる最高の電流密度と、コイルが熱暴走を起こす最低の電流密度を温度に対してプロットしてある。また、10−13Ωmで定義したJcも同時に示した。低温域での安定運転電流密度はJcとほぼ等しいかそれよりも低くなるが、高温域ではJcが低下することによる発熱量の低下を反映して運転電流密度はJcを上回るようになった。