二相窒素サーモサイフォンの実験的研究

通商産業省 工業技術院 機械技術研究所

○中納 暁洋、白石 正夫


はじめに
 ヒートパイプが宇宙用等温機器として開発されて以来、今日においては電力機 器の冷却、太陽熱及び地熱利用等、様々な形で利用されている。しかし、低温環 境下で作動するヒートパイプの研究はあまりなされていない。近年の高温超伝導 技術の発展に伴い、液体窒素温度領域で作動する熱伝素子の研究が望まれてい る。ここではヒートパイプの中でも応用範囲が広く、また制作が容易で低コスト のサーモサイフォン式ヒートパイプについて、三重点から臨界点までの広い圧力 範囲での流動特性及び熱移送特性を明らかにする目的で実験を行った。今回は、 これまでに得られた結果の一部を紹介する。

実験及び解析
 実験で使用したサーモサイフォン本体を図1に示す。加熱部、断熱部、凝縮部の長さはそれぞれ、75mm、35mm、160mm、全長270mm、内径は8mmという仕様で、凝縮部は銅製、断熱部、加熱部はステンレス製である。加熱部は肉厚0.3mmのステンレス管で、銅ブロックに覆われており、この銅ブロックがシースヒーターにより加熱される仕組みになっている。蒸気温度はサイフォン内の断熱部に挿入された熱電対により測定され、加熱部及び凝縮部の内壁面温度はそれぞれに取り付けられた16個、8個の熱電対の測定値を用いて算出した。
 実験では、凝縮部壁温を一定に保ち熱入力値を変化させることにより作動限界 を探った。なお、加熱部に対する液体封入率は100%に統一した。図2は凝縮部壁温を約114Kに保ち、熱入力値を変化させた時の軸方向温度分布を示す。凝縮部の温度分布は各熱入力値に対して一様な温度分布を示していることが分かる。それに対し加熱部は熱入力値が増加するに従い、はじめは一様な温度分布を示しながら、温度が全体的に上昇して行く。更に、加熱量を増やして行くと、やがて加熱部下部でヒートスポットが形成されるが、作動自体は安定に行われる領域が存在することが確認された。続けて更に加熱量を増やして行くと、ついには限界に達する事が観測された。