概要 E2-26
[はじめに] 最近酸化物超伝導体をはじめとする強相関系の材料に注目が集まっている。この種の材料としてLaMnO3は大きな磁気抵抗効果を示すことから応用面からも熱心な研究が行われている。LaMnOのLaサイトを2価金属で置き換えた系はペロブスカイト構造をもち270K付近で常磁性−強磁性転移を示す。基板のStTiO3と格子定数の一致するLa0.7Ca0.3MnO3(LCMO)を作製しその輸送特性を測定した。

[試料の作製] PLA法を用いてLCMO薄膜を作製した。基板にはSrTiO3(100)単結晶基板を使用した。基板温度850℃、繰り返し周波数1Hz(成長速度0.01nm/sec)、酸素分圧100mTorrで作製した薄膜はX線回折によりa-軸配向していることが確認された。またRBSのチャンネリングよりχminは7.7%であった。このことより良質な薄膜が成長していることがわかった。

[輸送特性] a-軸配向したLCMO薄膜を用いて輸送特性を測定した。R-T特性では室温での電気抵抗は6.4×10-3Ωcmであり温度の低下と共に半導体的に電気抵抗は増加した。160Kで最大値を示した後急速に減少し、金属的な振る舞いを示した。またSQUIDで測定した磁化は150K以下で強磁性、その温度以上で常磁性であった。このことより150K以下で強磁性と金属的な電気伝導が共存していることがわかった。室温でHall効果の測定よりcarrie密度は3×1019/cm3であった。Hall効果の測定には大きな磁気抵抗効果の影響が有り現在更に詳細に検討中である。磁気抵抗効果は常磁性領域では印加磁場の二乗で減少し、強磁性領域では複雑な挙動を示すことがわかった。77Kでの磁気抵抗効果と磁化の測定よりR(H)/R(0)=1-C(M/Ms)2で表すことができる。このことは大きな磁気抵抗がMnサイトのスピンキャンティングに起源することがわかった。比例定数Cは0.16であり更に詳しい解析を行っている。当日は磁気抵抗効果の異方性についても詳細に報告する予定である。