概要 E1-23
高温超電導体は、金属系超電導体と比較し極めて高い上部臨界磁場をもつので、強磁場発生用電磁石作成のための材料として候補にあげられる。しかしながら、実用化にあたっては解決すべき問題がいくつかある。その一つに変動磁場のもとで生じる交流損失があり、発生するジュール熱が原因でクエンチする可能性があるかどうかを評価することは重要である。本研究では、電流ベクトル・ポテンシャル法に基づく電磁場解析コードと熱伝導の解析コードを連成させることにより、(Bi,Pb)2Sr2Ca2Cu2Ox銀シース単芯テープ超電導線材の安定性を評価した。変動外部磁場としては、テープ面に垂直に(c軸方向に)かかる成分のみを考えた。 運転温度を20Kとして計算した結果、80T/sという大きな磁場変化を与えても、温度は3.5K程度しか上昇せず、常電導転移に至るにはまだまだ余裕があることが分かった。このことと、冷却の効果を無視したケースでの計算結果等から、高温超電導線材は変動外部磁場に対して極めて安定であり、クエンチが起こりにくいことを結論づけることができた。また本研究では、温度が上昇し回復する過程を、電磁場解析と熱解析の観点から説明を加えた。