概要 E1-21
銀シースBi2223超伝導テープは、工業応用が最も期待されている材料の一つであり、臨界電流密度Jcの支配要因を明らかにする数多くの研究がこれまでにも行われている。いくつかの研究成果によれば、超伝導テープ内でのJcの分布は一様ではないことが報告されており、試料内のJc分布を明らかにしていくことは今後の実用化にむけて非常に重要である。本研究では、いくつかの銀シースBi2223超伝導線材表面の磁束密度分布をホール素子を用いて測定し試料内部のJcの分布を議論する。実験は液体窒素(77K)中で行ない、試料表面に垂直に外部磁場100[Gauss]を印加した後、磁場を0の状態にして、試料表面の残留磁場分布を走査ホール素子を用いて測定した。 単純化された電流経路を試料内部に仮定し、Biot-Savart lawを用いて得られた磁場分布と実験結果の比較を行った。数値解析の結果、磁場分布の勾配とJcは比例関係にあることが明らかになった。 一方、実験結果はJcが低いところ(‾3000[A/cm2])では数値解析の結果とよく一致したが、それ以上のJcになると磁場分布の勾配が数値解析の結果より低い値となった。 以上のことから、Jcのある程度高い試料になると、試料内部のJcの分布が不均一になっているのではないかと推測される。