概要 C2-9
 超伝導体における双晶面などの面状ピン中を運動する磁束線は面に沿った guided motion を行い,輸送特性が電流の方向に依存する異方性が現れる.また,磁場と電流に対して垂直な方向には,磁場方向の反転に対して符号が反転する Hall 電圧が生じるのに加え,磁場反転に対して符号を変えない電圧が大きく寄与する. 本研究では,周期的な面状ピンにおける磁束線の2次元運動について,熱揺動力を考慮した Fokker-Planck 方程式を基に理論解析を行った.面状ピンによるピン止め特性の異方性の他に viscosity drag の異方性も考慮し,これらの影響によって電気抵抗率テンソル ρij, 伝導率テンソル σij にどのような異方性が現れるか熱揺らぎの影響も含めて考察し,以下の結論が得られた.面状ピンと磁場は z 軸に平行で,電場,電流密度は z 軸に垂直であるとする.面状ピンの yz 面からの傾き角を θ とすると,ρij, σij の非対角要素に θ に依存する対称成分が現れるが,反対称成分は θ に依存しない.また,viscosity drag,ピン止め,及び熱揺らぎの影響は,σxy の反対称成分 (Hall conductivity) には現れない.Onsager の相反定理 によれば,反対称成分は磁場方向の反転に応じて符号を変えるのに対し対称成分は符号を変えないので,これらの性質と実験データとの対応は明確である.