概要 D1-6
2種のオ−ステナイト系ステンレス鋼(SUS304LおよびSUS316L)の溶接金属の液体ヘリウム温度における機械的性質におよぼすδフェライト量および水素チャージの影響を明かにするために,δフェライト量を3段階(11,5,0%)に変化させた溶接金属に対し、高温水素ガス中で水素チャージ処理をした試材のシャルピー衝撃試験と破壊靱性試験を実施した。 シャルピー特性についてはSUS304L,SUS316Lとも溶接金属中のδフェライト相の増加に伴い、極低温域での吸収エネルギーが低下する傾向が確認された。また水素チャージ処理による吸収エネルギーの顕著な変化は見られなかった。一方,4Kにおける破壊靱性についてはδフェライト量が11%の場合KIC(J)値が約100MPa√mであり、母材の250MPa√mに比較し,低値であったが,水素チャージ処理による変化は見られなかった。シャルピー特性や破壊靱性値が低下した溶接金属の破面では,き裂がδフェライトまたはδフェライト/オーステナイト界面を優先的に伝播していることが確認された。 この研究はNEDOが中心となって推進している水素エネルギーの国際的な有効利用を目指したWE-NETプロジェクトにおいて実施したものである。