溶融法によるLa123超電導体の作製と評価

 RE1+xBa2-xCu3Oy系超電導体(RE:Nd,Sm,Eu)は低酸素分圧下で作製することにより、90Kを越える超電導転移温度(Tc)を示すことが知られている。しかしながらLaBa2Cu3Oy(La123)系ではLa3+とBa2+のイオン半径が近いため、La3+とBa2+の置換が起こり、La1+xBa2-xCu3Oy型の固溶体を生成し、高Tc材料を得ることは難しかった。本実験では、La123超電導体の第2相であるLa4-xBa2+2xCu2-xO10-2xをBa過剰組成とすることでLa1+xBa2-xCu3OyがLa過剰組成側にずれるのを抑制し高Tc材料を得ることを目的とした。La4-xBa2+2xCu2-xO10-2x(La422ss)の組成をx=0,0.2, 0.4と変化させ焼結し、焼結法により作製したLa123とLa123+20mol%La422ssの割合で混合し溶融成長を行った。作製した試料について超電導量子干渉型磁束計(SQUID)によりTcの測定を行った結果,La422ss相がBa過剰組成の試料がより高いTc(onset)=93Kを示しかつ転移曲線がシャープなものが得られた。さらに77K,0Tにおける臨界電流密度(Jc)が104A/cm2オーダーの高い特性を示した。これらの結果からLa422ss相をBa過剰組成としたものを溶融法に用いることがTc,Jcの向上に寄与することが分かった。