高温超伝導体における電荷分布:E-J 特性の非線形性と形状効果

 酸化物高温超伝導体の電磁特性を調べるため,電場 E と電流密度 J とのE-J 特性を与えて Maxwell 方程式を解き,磁場,電流密度,及び電場の分布などを求める数値解析が盛んに行われている.しかし,超伝導体におけるマクロな電荷分布には,全くといっていいほど目が向けられていないのが現状である. 本研究では,これまで知られていなかった電荷分布についての詳細を初めて明らかにするという基礎的な興味から,無限に長い超伝導体に平行に磁場を印加した場合の電荷分布について理論的研究を行った.冪乗則の E-J 特性を仮定し,一定速度で掃印される磁場を印加した場合の定常的な電磁場を数値的に計算して div E より電荷分布を求めた.主な結果は以下の2つにまとめられる. 1.「電荷分布は E-J 特性の非線形性が強いほど明確に現れ,Ohmic な特性の場合に電荷の分布はない.」 2.「電荷分布の様子は超伝導体の断面の形状によって大きく異なり,なめらかな縁の付近での電荷の分布はほとんどない.しかし,矩形断面の角の付近のように電場の方向が大きく曲げられるようなところでは,電荷が正負に大きく変化して分布する.」 講演では,様々な条件の下での電荷分布の図を具体的に示し,電荷分布がいかに興味ある振舞を示すか述べる予定である.