多層構造の磁性蓄冷器の有効性

 低温領域において蓄冷材の対象となり得るのは、磁性体の相転移点(Tc)近傍に おける磁気比熱である。しかし、この温度領域の作業流体である加圧Heの比熱と磁性体の比熱を比較すると、比熱ピークの絶対値は同程度であるが、磁性体ピークの半値幅は加圧Heのそれの1/3程度であり、このため単一の磁性体を用いてHeの比熱全域をカバーすることは不可能である。さらに蓄冷器の上下方向には温度勾配までついている。従って、”磁性体をどのように活用すれば、蓄冷材として効果的にその特性を利用できるか”、ということがこの研究の発端となっている。このことから、蓄冷器の温度勾配に沿ってTcの異なる磁性体を層状にする多層構造の蓄冷器を構成する必要が出てくる。これにより蓄冷器の全動作温度領域にわたって、加圧Heと同程度の熱容量 を持つような蓄冷器を構成することができる。本研究では、このような磁性体のTc近傍の比熱を活用した層状構造の蓄冷器の有 効性について実証しようとするものである。