閉ループ型ファウンテンポンプ中の非定常特性

 超伝導マグネットの冷却に超流動ヘリウム(He II)を用いた強制対流冷却が考えられている。その流れ駆動用ポンプの一つとしてファウンテンポンプが提案されている。ファウンテンポンプは温度差をつけると圧力差を生じる超流動ヘリウムの噴水効果を利用している。このため多孔質プラグと熱源からなる簡単な構造をもち、機械的駆動部なしに熱入力のみで超流動ヘリウムの流れを駆動できる。本研究の対象である閉ループ型ファウンテンポンプは閉ループ内にファウンテンポンプを組み込んだものである。閉ループ型はその幾何学的形状が複雑であり、ポンプの性能向上には噴水効果以外にループ内の圧力損失や熱の輸送などを考慮しなければならない。そこで本研究ではループ内の熱輸送・圧力損失・入力熱量の分配に着目し、実験と解析の結果からその伝熱特性を明らかにすることを目的とした。具体的には実験においてループ内の温度分布・ポンプ両側の圧力差・ループ内ヘリウムの質量流量を詳しく調べた。ファウンテンポンプでは多孔質プラグをはさんで熱入力を行わない側にも温度上昇がみられる。このことからプラグ両側での熱分配のモデルを提案し、数値解析を行った。実験で用いたテストループは主に噴水効果を起こす多孔質プラグ・熱源・熱流抑制管・熱交換器からなる。ループは断熱真空中に置かれ熱交換器により飽和He II槽と熱的に接触している。ループ内のHe IIは大気圧に加圧されている。本実験では飽和He II槽と、プラグの入口と出口・熱交換器の入口と出口の計5ヶ所の温度と、プラグ両側に生じる圧力差、ループを流れるHe IIの質量流量を計測した。ファウンテンポンプに一定の大きさの熱を入力した場合について飽和He II槽の温度を一定に保つようにして実験を行った。実験より700mWの熱入力の範囲では、本テストループでは熱交換器出口温度は飽和HeII槽とほぼ等しく熱交換器が十分に働いていることがわかった。また本多孔質プラグにおいて噴水効果の式が成り立っていることからプラグ内が超流動層流状態にあることが確認できた。ファウンテンポンプの流れ駆動部である多孔質プラグの両側における熱分配のモデル化を行った。熱源より与えられた熱はまずプラグ下流部の温度を高く保つために使われ、この熱量を流れ駆動用の熱量とする。残りは熱流抑制管を通って直接熱交換器側に漏れる。この流れ駆動用の熱のうち一部は噴水効果によりプラグ上流部に移動すると考える。実験より得られた値を用い、熱分配のモデルと噴水効果の式・ループ内の圧力損失の式・熱輸送の式から数値計算を行った。その結果、本実験において入力熱量が400mW以下の場合については本解析により、ループ内の温度分布、ポンプ部に生じる圧力差、ループ内の質量流量などの緒量を予測できること、入力熱量に対する熱分配の比は入力量に関わらず、ほぼ一定の値をとることなどがわかった。