密巻き含浸型超電導磁石の構造解析

 高電流密度型の超電導磁石においては、巻線部は強大な電磁力を経験する。巻線部に発生する応力や変形は、含浸材のクラックや超電導線間あるいは巻線部と巻枠間の滑りなどの擾乱の原因になる。これらの機械的外部擾乱が発生し、超電導線の温度が分流開始温度を超え、常電導伝導領域が拡大するとコイル全体がクエンチに至る。 巻き線部が経験する応力は、1)巻線、2)冷却、3)励磁に伴い変化する。これらの応力分布の変化は、最高到達電流(クエンチ電流)や超電導コイルの特徴であるトレーニング特性と相関を有すると考えられている。本研究は、超電導磁石の安定性と応力状態や変形量の関係を関連づけることを目的としている。今回は、実際の超電導磁石の機械的挙動をシミュレートするために、1)巻き線張力および2)巻線部と巻枠の滑りを考慮した応力解析を実施したので報告する。