La2-xSrxCuO4(x=0.13)の混合状態における熱磁気効果と異方性

 これまで我々は3次元性の強いY123と二次元性の強いBi2212についてネルンスト効果(熱磁気効果)と電気抵抗の測定を行い, 混合状態において磁束の運ぶ輸送エントロピーを見積もった。磁場がc-軸に平行な場合の磁束の輸送エントロピーはab面内の超伝導特性によって決り, コヒーレンス長ξabが同程度のY123とBi2212は同程度の輸送エントロピーを持つと期待された。しかるに実験結果は, 異方性の大きなBi2212でY123よりも一桁小さな輸送エントロピーを与えた。今回は異方性と輸送エントロピーの関係を明らかにするために, ξabの大きさは同程度で, 両者の中間の異方性を持つLa2-xSrxCuO4(x=0.13)についてネルンスト効果を測定した。測定は磁場がc-軸に平行な場合と垂直な場合について行われた。c-軸に平行な磁束の輸送エントロピーはBi2212とほとんど同じ大きさであり, 少なくとも両者の間では異方性の違いは目立った影響を与えていない。Y123の結果との不一致は何に起因しているのか。講演では磁場がc-軸に垂直な場合も含めて磁束運動と異方性の関係について考察する。