会長 挨拶

written on Apr. 23, 2011

 





    低温工学・超電導学会会長/福岡工業大学学事顧問 
山藤 馨 


公益社団法人低温工学・超電導学会の発足について

本学会の前身である社団法人低温工学協会は、極低温科学を応用する科学技術の発展を図ることを目的として、1966年に設立されました。

その当時は、BCS理論の提出に続きJosephson効果も発見され、さらに、Nb3SnやNbTiなどの金属系超電導材料も発見されて、わが国でも、低温工学や超電導工学の構築に向けてのみずみずしい機運が盛り上がり始めた時期でした。

その後、金属系超電導材料を利用する超電導・低温工学は著しい発展を遂げましたが、1986年に至り、銅系酸化物高温超電導材料が発見されて、飛躍的に多くの研究者が超電導・低温科学技術の分野に参入する事態が生じました。このため、本協会でも研究・開発業績の発表の場を強化する必要に迫られ、1987年に、低温工学会が低温工学協会の内部に設置されました。


このような歴史を経て、この度の公益法人制度の設置に伴い、公益社団法人化を行うこと、並びに、名称を低温工学・超電導学会とすることが、会員の総意に基づいて決定され、2011年4月1日をもって、本学会が、内閣総理大臣の認可を受けた公益社団法人として発足しました。

1911年に超電導現象が発見されて百年が経過し、超電導・低温関連科学技術が“次の世紀”における新しい発展のスタート台にたった2011年に発足した本学会が、今後、時代の要請に応えつつ、21世紀の社会に大きな貢献を行っていくことを目指し、会員の皆様が努力されることを強く希望します。


21世紀の社会や地球環境改善とエネルギー供給確保への貢献を目指して

21世紀に生きる私たちに要請される最大の課題は、20世紀の最大の負の遺産である地球環境の悪化の防止および改善、並びに、現在は原子力発電に主に頼っているエネルギー供給事情の根本的改革です。超電導・低温関連科学技術は、このいずれの課題に対しても有効な解決手段を提供する可能性を大きく有していることから、その発展を目指す本学会並びに会員の責務も、重大です。

この他の社会生活に関しても、超電導・低温関連科学技術は、21世紀のキーテクノロジーの一つとして、医療関連や、近い将来に東京—名古屋間を走ると期待される超高速超電導浮上列車等の交通・輸送関連をはじめ、種々の面での有益な寄与を目指した発展を遂げつつあります。これに伴い、超電導・低温関連の産業にも、近い将来の著しい発達が期待されています。

その一方では、20世紀末のバブル崩壊に続く最近のリーマンショック、さらには本年の東日本大震災が、わが国の経済に甚大な悪影響を齎し、超電導・低温関連技術の発展にも暗い影を落としつつあります。会員数こそほぼ一定のレベルを保っていますが、企業からの会員数や賛助会員費の口数は大きく減少しつつあるのが、実情です。

しかしながら、21世紀の最大の課題である地球環境の改善やエネルギー供給問題の解決、さらには社会生活の改善、等への貢献を目指す本学会の責務の重大性に鑑み、できるだけ多くの若い人たちをも含む有能な方々が本学会に参加されて、超電導・低温関連技術の発達や普及に努力されることを、切に希望致します。


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