インプルームNd:YAG-PLD法によるIBAD-MgO基板上へのYBa2Cu3Oy膜作製

YBa2Cu3Oy films prepared by in-plume Nd:YAG-PLD method on IBAD-MgO substrates


小野 郁朗, 一野 祐亮, 吉田 隆, 高井 吉明 (名大); 吉積 正晃, 和泉 輝郎, 塩原 融 (SRL)


Abstract:Nd:YAGレーザーは初期コスト、ランニングコストが安価なため、工業応用に有利である。また、今後、超伝導線材の実用化では、省資源・高速での線材作製も重要となってくることが予想される。
本報告では試料作製における収率の向上を目的とし、その方法としてインプルーム法を用いてYBCO膜の作製を行った。YBCO膜はNd:YAG-PLD法を用いて10 mm2のIBAD-MgO基板上に作製し、ターゲット-基板間距離(dt-s)、酸素圧力(Po2)に対して、超伝導特性及び収率を評価した。なお、膜厚は全て400 nmとした。
これまで我々のグループで得られている最適条件dt-s=40 mm、Po2=40 Paで作製したYBCO膜の収率が7.69%であったのに対し、dt-s=20 mm、Po2=200 Paで作製した試料の収率は18.96%を示した。また、 XRDの結果から作製した全ての試料は、良好な2軸配向であることが確認できた。
作製した試料のTc、JcはYBCO膜の中央で80.1 K、0.13 MA/cm2で、端部では88.3 K、1.81 MA/cm2であった。また、端部の成膜レートは中央に比べ1/5であり、超伝導特性および膜厚が不均一であった。
この問題を解決するためにターゲット法線を鉛直方向に対して傾けることでプルームを歳差運動させた。これにより、Tc、Jcはそれぞれ端部・中央共に86.8 K、1.62 MA/cm2程度を示し、端部の成膜レートは線材中央に比べ2/3まで向上し、超伝導特性と膜厚の均一性が向上した。しかし、この値は最適条件でのTc=89.7 K、Jc=2.07 MA/cm2と比べ低い。今後、Tc、Jcの向上のため、組成の最適化などを検討する予定である。